ゴールデン・カムイ

マンガ配信サイト、となりのヤングジャンプ(https://tonarinoyj.jp/)で、ゴールデン・カムイが全巻無料公開中だ。

初めて見たとき、この作者が北海道出身でないとしたら道民の名折れだろうと思い、北広島市出身と知って安心した覚えがある。北海道の自然や歴史、風俗、アイヌの生活文化などが、それほどまでに綿密に描かれているからだ。私が特に感心したのは、キャラクター一人ひとりのバックグラウンドストーリーやエピソードが綿密に組み上げられていて、誰だっけという人物がいないこと。歴史的事件や登場する小道具が、巧みに伏線となって物語を推し進めていること。細部へのこだわりと同時に、登場人物の性格や行動が、他のマンガや小説では見たことがないほど大胆でダイナミックなことなど、数え上げればキリがない。また、見たこともないほど下品なシーンもあり、残酷シーンも山盛り。かと思えばシリアスなシーンの中に、ギャグを放り込んでくるなど、作者の懐の深さや胆力のようなものがひしひしと伝わる。

2019年にイギリスの大英博物館で開催された日本のマンガ展は、ここでこれまで開催された日本に関する展覧会の中で、最大のスペースが割かれた大規模なものだったが、そのキービジュアルにヒロインのアシリパが選ばれている。マンガは国内販売1500万部と言われているが、それ以外に世界中にどれだけの読者がいるか、計り知れない。

私は、昔から北海道にはヒーローがいないのを残念に思っていた。道外各地には、戦国大名や武人、文化人、物語の主人公など、偉人が目白押しで、それぞれ優れたエピソードが伝えられている。そういう地域の人が、苦境にたったときに地元の英雄の言葉やエピソードを思い出して頑張ることもあっただろう。北海道はその部分がちょっと弱く、一番知名度が高い人物が1年程度滞在したアメリカ人である。ゴールデンカムイはマンガではあるが、これからの北海道を代表する新しいヒーロー、ヒロインが生まれたのではないかと思う。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です