タイトル画像の話/テーブルクロス

絵画の並ぶ回廊に、イスが一脚とテーブル。足元には深くて暗い深淵が...。というちょっと不気味なCGを作ろうとしたが、深さがうまく表現できなかった。多分、画角や照明の当て方の問題だろう。現実にはありえない光景はCGの真骨頂だが、見たことのないものに対する、作者のイメージ力の限界かもしれない。

さて、技術的にはテーブルクロスが今回のポイントで、シワのより具合など、手作業では造形が厄介な作業を、Blenderが自動的に行なってくれたもの。「物理演算」という技術である。CG空間は上も下もなく重力のない世界で、鉄塊でも空中に置けばそのまま落ちることはない。布のテーブルクロスも同様で、何もしなければいつまでも四角いままで空中にあるが、「物理演算」の機能を使うと、重力があるかのように下に落ちて行って自然にテーブルを覆う。シワのより具合など、実際に覆ったらどうなるかをBlenderがシミュレーションしてくれるのだ。
布の厚みや重さはもちろん、重力の強さなどもユーザーが指定できる。また、水面を揺らした時の揺れ具合、積み重ねた物体が衝突で飛び散る様子など、さまざまなものをシミュレートできる。ただし、布の様々な部分の動きを計算し尽くさなければならないので、この技術が登場したころはかなり高性能なコンピュータが必要だった。髪の毛や動物の毛の動きなども物理演算でなければとうてい表現できないものなので、最初の「トイ・ストーリー」は、ぬいぐるみではなく表面がつるつるのプラスチックのおもちゃが登場する話にしたのではないかと思っている。

その昔にCGをいじっていた頃、物理演算の登場には驚かされたものだ。当時はスーパーコンピュータなどの高速演算環境がなければ出来なかったので、自分には縁がないと思っていたが、Blenderと少々くたびれたPCでもできてしまった。感動的である。昔の自分に自慢したい。

さて、実際の作業の作業は、例えばこんな動画を見るとよくわかる。見てわかるとおり実に簡単な操作だ。長年敬遠していたことが実は簡単にできることがわかる。それもまた、今の時代のいいところだ。

2 thoughts on “タイトル画像の話/テーブルクロス

  • 1月 5, 2024 at 10:02
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    CGは未だ実践経験がありませんからすべてが新鮮で感動的ですね。物理演算などと専門用語を聞いただけで相当難しい計算でもするのだろうか?と思ってしまいます。考えて見れば、手作業のグラフイック時代には5mm角くらいの文字は溝差し定規とガラス棒と面相筆などを使って巧みに手書き文字まで描いていたのですから、しかも筆先をカットしたりしてゴジック体、負での毛を少なくして明朝体に描き分けたりもしましたから、手を汚さずキー・ボードとマウスだけでのグラフイック作業は身につければ遥かに優れた作品をいとも簡単に仕上げる事が出来る訳ですね。しかし、頭から難しいものとの先入観念が邪魔をして未だに踏み込めずにいる訳です。ここまで操作出来ているのには相当な苦労や年月も要しているのでしょうが、何でも挑戦されている姿勢には感服してしまいます。お見事です。

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    • 1月 5, 2024 at 10:46
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      テーブルクロス自体は参考動画のように、簡単にできてしまうものを食わず嫌いだっただけですが、カメラのアングル決めは難しかったです。例えばテーブルは、イスの真ん前にあるように見えますが、実際はやや斜め前方に置いてあります。上から見下ろすアングルでは、テーブルを真正面に置くと座面の高さの違いから、奥にズレた場所に置いてあるように見えてしまうのです。物品のスタジオ撮影などと同じですが、見ては置き直しを何度か繰り返しました。

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