フライト(2012年アメリカ映画)

監督は「バック・トゥ・ザ・フューチャー」のロバート・ゼメキス、主演は「マルコムX」のデンゼル・ワシントン。

いきなりあらすじで恐縮だが、アメリカ国内線の機長、ウィトカー(ワシントン)は、海軍上がりで腕は良いが、アルコール中毒でしかもコカインの常習者。その日は、突然機体の故障で操縦不能になるが、奇跡的な技術で回避し、わずか数名の犠牲者だけで済ませた。機長は英雄として脚光を浴びる一方、当日の行動への疑惑も深まり...。

この作品のテーマは「嘘」である。悲しいかな我々自身も仕事で、あるいは家庭生活で、時々嘘をつく。嘘をついておけば丸く収まることも少なくないし、周囲からそれを期待されることもある。ウィトカーの場合も、会社の雇った優秀な弁護士が、事故調査委員会での査問が、ごく形式的なもので済むように根回ししていた。そういう手配をした同僚・上司は、同時に友人でもある。彼がちょっとした嘘をつくだけで、自分だけでなく、多くの人が助かる。大人ならそういう時は、良心の呵責をぐっと飲み込んで嘘をつき通すところだ。が、たったひとつ、最後の最後に小さな嘘をつくことができずに...。

これは、ドラマであれ映画であれ、日本では絶対に作れない作品だ。旅客機の機長がアル中&ジャンキーというだけでも、どこからか待ったがかかる。しかも事故後に保身のために駆け回り、暴力や暴言で知人や家族からも見放されるような主人公は、日本では絶対共感を得られない。実際日本公開時も、普通の航空サスペンスであるかのように広告され、アル中と薬物には一切触れられなかった。ちょっとフェアではないが、それもまた誰かの、仕事のための小さな嘘かもしれない。

 

One thought on “フライト(2012年アメリカ映画)

  • 7月 14, 2017 at 05:51
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    「虚偽性障害」および「ミュンヒハウゼン症候群」または「代理ミュンヒハウゼン症候群」など
    嘘も病気なんですね。自身の保身のためであったり,自分を評価して欲しいためであったり,理由は様々でしょうが「嘘も方便」の場合もありますから,どうせ同じ嘘をつくなら,周囲がハッピーになれる嘘がいいですね。「本音じゃぁなく嘘だろう!」と言われそうですが。

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