さて、スター・ウォーズ本編はもちろん大好きなシリーズだ。だが、実のところストーリーの帳尻合わせのために、窮屈になってる感じがあったのだが、今回は外伝ということで「やり放題」だ。もともと第一作が、往年の海賊ものを意識した荒唐無稽、痛快冒険ものとして始まったのだが、そのDNAはむしろローグ・ワンに受け継がれているように思う。
今回は「フォース」の見せ方も良かった。本編ではフォースの威力がインフレ気味で、ほとんど超能力と化していたが、ローグ・ワンの舞台はエピソード・フォーと同時期の、ジェダイが衰退していた時期。登場人物にジェダイがおらず、唯一盲目の棒術使いの戦士が自己流のフォースを磨き上げている。そのアクションの、人間技を超えるか超えないかというところがリアルだった。演じたのがドニー・イエンなので、カンフー・スタイルなのだが、香港映画のアクションというより、座頭市のスピードと切れ味を感じさせた。
総統モフ・ターキン(旧キャンスティングはピーター・カッシング/94年没)が、平然と登場した時は、声を上げそうになった。もちろん実写とCGの合成なのだが、技術以上に肖像権や俳優ユニオンの思惑などがからみあって、実現が難しかった。さすがディズニー、映画に新しい地平を切り開いてくれた。これからはS・マックイーンの新作や、ヘプバーンとモンローの競演だって見られるかもしれない。若い人にはピンと来ないかもしれないが、映画が娯楽の王様だった世代には、ご褒美のようなものだ。
そして何よりダース・ベイダーである。あの、冷酷、峻厳、圧倒的な強さが帰ってきた。なぜアナキンが暗黒面に堕ちたか。それは女が死んだからという本編の説明は、分からないでもないが、銀河を震撼させる巨悪の誕生秘話には、少々物足りなかった。そんな男は、銀河に1兆人はいるのだから。その点、ローグ・ワンのベイダー卿は、そんないじけた過去を切って捨てるかのような活躍ぶりだった。この作品中で、真のフォースを使っているのはベイダー卿だけ。ダークサイドに堕ちたフォースのすごさは、シリーズ中屈指である。声は以前と同じ、ジェームズ・アール・ジョーンズ。音声合成などではなく、大御所自らの出演である。ローグ・ワンは、スターウォーズに必要なものをすべて盛り込んだ、スピンオフにして、魂の本編である。
