セッション(アメリカ映画/2014年)

先日のアカデミー賞®で、「ラ・ラ・ランド」で最年少監督賞を受けたデイミアン・チャゼル監督の、28歳の作品である。たまたま動画サイトで見て、感想を書き始めたところで受賞のニュースが入ってきた。

(以下感想)
とんでもない映画を見てしまった。ファーストシーンから魂を鷲掴みにされ、そのまま心臓を締め上げられ続けて、途中何度か死んだかと思う、そんな映画である。音楽を少しでもやったことのある人には是非見てほしいが、何しろ「能力のない奴はロックをやれ」というような言葉が出てくる作品だ。映画界、音楽界、ともに賛否両論で、公開時にはかなり論争もあったらしい。その論争自体が、この映画をよく表している。
世界最高峰の音楽学校で、ジャズドラマーを目指す青年と、彼を過酷なやり方で指導する教授の物語である。が、現役ジャズメンからの評価が極めて厳しい。いわく、セッションと言いながらセッションのシーンがない(これは邦題の付け方の問題)、指導の方法が間違っている、そのほか、時折汚い言葉も交えて、要は「これはジャズではない、ウソがある」という。それに対して、映画ファンや評論家の評価は絶大で、「そのウソがすばらしいのだ」と、真っ二つに別れている。

現役ジャズメンを怒らせたのは、おそらく「Good job!(グッジョブ」という言葉がジャズをダメにした」というセリフだろう。ジャズは一人ではできない。プロ同士なら、演奏中のミスをカバーしあい、ステージから降りたら労をねぎらうのは当然だ。が、この作品では、だから今ジャズの巨人が生まれないのだという。ミスを許さないのはもちろん、自分にもメンバーにも、もっとエゴを押し通せという。さらに、ジャズメンは演奏で語れ、ということまで作品で表現してるのだ。これは仕事のジャンルこそ違え、かなり耳が痛い。この映画に反論したジャズメンは、非常に勇気があったと思う。

鑑賞中、始めはひたむきな姿に共感し、そのうち、自分にはバイオリンなぞやる資格はないとかなり恥じ入った。が、ラストシーンを見終わった後に、何を言われようとやりたいからやるんだというエゴがムクムク起き上がって来るのを感じた。
それにしても、これが28歳の作品だよ。同年齢の自分なんて、ただのアンポンタンだった。

刑事ドラマとアメリカの警察

刑事コロンボやダイ・ハードなど,アメリカの映画やTVドラマの主人公は刑事が多いが,日本の警察の刑事とは全く違う複雑な階級制度で,それどころか,舞台となるロサンゼルスやニューヨークの警察組織は,お互いになんの関係もない、独立した組織だということを近年知った.アメリカの州はそれぞれが独立した国のようなものだから,どれぞれ独立した警察組織を持つ.ロサンゼルスやニューヨークなどの大都市には,独自の警察組織があってそのトップは市長である.だからいくら敏腕刑事が犯人を追ってやむなく訪れたとしても,他の市では一切捜査活動ができない.だからドラマでは,そのへんの葛藤をうまく盛り込んだシナリオが多い.その点FBIは州を跨いで捜査ができるが,市警察や州警察の上部組織ではない.

また,現在でも「保安官」がいる.しかも相当地位が高く,高層ビルに立派なオフィスを構えていたりする.その他にも,大学や各種の組合にも,独自の警察組織がある.沿岸警備隊は別の組織だし,ニセ札の捜査は,大統領の護衛をするシークレット・サービスの役目だ.

こんなにたくさんの警察組織があるのは,民主主義の本家だからだ.市民は自分や家族,財産を自衛する権利があり,さらに市民の集まりである組織も,独自に保安のための手段を持てるということらしい.保安官の地位が高いのも,選挙で市民から選ばれるから.市長が任命した職員である警察官よりも地位が高く権限が大きい.「お上」という雰囲気のある日本の警察と比べると,筋が通っているような,いないような,妙な感じがする.警察の組織や階級については映画やドラマの翻訳者も困っているようで,とりあえず何でもかんでも「刑事」にしてしまうらしいが,階級がテーマになるエピソードだと,苦労していると思う.

さて,刑事物の話題にふさわしく,最後に長年の謎に関する意外な真相を。
「コロンボ刑事のファーストネームは”フランク”だ」

次回「コピーライター」(3/1公開予定)
乞うご期待!

NASAが地球サイズの惑星を7つ発見

今朝早く,NASAが重大発表を行なうと予告があり、楽しみにしていた。それによると、地球から40光年離れたトラピスト1という恒星系に、地球と似たサイズの惑星を7つ発見したという。

このうち3個は生命が存在可能なハビタブルゾーンの中にあるという。これらはNASAのスピッツアー宇宙天文台と、地上のトラピスト望遠鏡(このプロジェクトのために名付けられたもの)によって観測された。

さて、これは動画サイトに予告があったため、貴重な瞬間にリアルタイムにたちあうことができた。以前も、深海調査船からのリアルタイム配信に立ち会うことができた。動画配信は、テレビ番組のはるかに及ばない世界にきていると実感する。

インディアナポリス号の惨劇

久しぶりに映画「ジョーズ」を観た.さすが名作だけあって,ストーリーもアクションシーンも,今見ても全く面白さは失われていない.ところがその中に,何度も観たはずなのに,すっかり忘れていたシーンがあった.鮫狩りに参加した地元漁師サム・クイントが,太平洋戦争中の体験談を語るシーンである.

太平洋戦争終盤の昭和20年,サムは米巡洋艦インディアナポリス号の乗員で,秘密任務の帰路,日本海軍の伊号潜水艦に撃沈された.そして千人以上が海に放り出されたが,極秘作戦のため救難信号が打てず,救援が来るまで100時間以上もかかった.その間,仲間が次々に鮫に襲われていき,最終的には300人程度しか生還できなかったという話である.映画の中では,サムの語りだけにもかかわらず,ジョーズの襲撃シーンにも劣らない迫力だった.

この話は実話なのか創作なのか.「インディアナポリス号」で検索してみたところ,実話も実話,タイタニックと並び称されるほど有名な海の惨劇だった.その鮫との戦いの様子は映画よりさらに陰惨で,正直ちょっと検索したことを後悔したほどだ.
撃沈した伊号潜水艦は,本来内部に水上飛行機を積んでいて,当初はアメリカ本土の空襲を行っていたが,すっかり戦局が不利になったこのころには,人間魚雷「回天」を搭載していた.ただし,この時の攻撃に使われたのが回天かどうかはわからない.映画では救難信号を打ってなかったことになっていたが,実際は発信されていた.にもかかわらず救難が遅れたのは,米軍内部に派閥争いがあってコミュニケーションがうまくいっておらず,信号を受けてはいたが,日本軍に対する欺瞞作戦の一種と判断されたため,救難活動が遅れたのだという.まったくどこをとっても皮肉で救いようのない話だが,極めつけは,インディアナポリス号の秘密作戦の内容が,広島に投下した原爆の輸送だったことだろう.

次回「刑事ドラマとアメリカの警察」(2/26公開予定)
乞うご期待!

 

LとR

2016年、「リッツ」や「オレオ」で知られた「ヤマザキナビスコ」が、米ビスケット大手「ナビスコ」との契約を解消し、 YBC(ヤマザキビスケット株式会社)になった。1970年以来おなじみの「リッツ」を手放したのである。

この結果、市場にはナビスコ社の新「リッツ」と、YBCのクラッカー「ルヴァン」が並ぶことになった。名称とブランドを引き継ぐナビスコと、生産技術と販路を握るYBCの真っ向勝負である。
この戦い、普通に考えれば製造と販路を握っているYBCの勝ちだが、旧リッツのシェアがすべてルヴァンに移行してようやく勝負は引き分け。万一1割でも新リッツが占めるようなことになればダメージは大きい。油断はできない。
CMでも、ナビスコが変わらないパッケージを見せつければ、YBCがリッツ時代の顔であった沢口靖子を起用。また、同一企業の協賛により、最も長く開催されたプロサッカーリーグの大会というギネス記録にもなっていた、「Jリーグヤマザキナビスコカップ」を「YBCルヴァンカップ」に変更した。「オレオ」に相当する製品が出てないことを見ても、クラッカーがいかに大きな市場か分かる。

ネット上でも、昨年来無数の書き込みが見つかる。この中にはどちらかの、または両方のキャンペーンだろう。リッツがなくならなくて良かったというもの、食べてみたらルヴァンのほうがおいしかったというもの。そういう分かりやすいものの他にも、提携が終わったこと自体を周知するのは、どちらにとって有利かなど、考察するのが楽しい。提携終了を知らない人が知るのだからYBCに有利にも思えるが、ナビスコが控えめに予想していた場合、食べ比べブームが起こり、期せずして新リッツの効果的な品薄戦略になるかもしれない。

そして最後はわれわれ消費者の目と口だ。店頭にどちらが多いかももちろんだが、とかく美味しくなっただの、まずくなっただの、製法・成分とは無関係のブームも起こりやすい。この際久しぶりに、空想を広げてくれる「大人の味」を食べてみてはどうだろう。