凶悪な犯罪事件が起こると、犯人を知る人の間で「まさかあの人が」という声が聞かれることが多い。いかにも温厚で社交的な隣人が、普段の様子からは想像もつかないような、残酷で陰湿な行為に及ぶというのは、決して珍しいことではない。
しかも、表には出せない醜い感情や、不道徳な欲望を抱えて生きているというのは、何も犯罪者に限ったことではない。残念ながら、我々自身にもそういう部分がないとは言えない。世にもおぞましい犯罪者となる可能性が、実は心の奥底に潜んでいるかもしれないのだ。
そんな心の暗部や、本人も気づかないような恐ろしい犯罪傾向を、一瞬に暴き出す装置がある。この分野では日本は最先端で、人工知能が登場する前から実用化されているだけでなく、すでに全国の警察や関連施設に設置されている。そして今も、多くの人間の隠れた犯罪傾向を暴き出しているが、法の壁のせいで、その情報を元に捜査などを行うことは許されていない。
告白するが、恥ずかしながら私も警察署で、その装置にかけられたことがある。結果は惨憺たるもので、自分が実はどんなに凶悪で冷酷な人間なのか、そして、いつ何時犯罪に走るかわからないような人間であることを、まざまざと見せつけられた。思い出したくもない出来事だが、社会の安全のためには必要な装置なのだ。