I can’t give you anything but love

Jimmy McHugh(1894-1969)の作品だが、実に惜しい。作曲家の没年からわかるように、まさに今年2019年にパブリックドメインになるはずの曲だったが、「平成30年著作権法改正」により、昨年ギリギリで権利期間が伸びてしまった。今年になったら紹介しようと思ってリストアップしていたのだが。


これは、「ジプシー・ジャズ」と呼ばれる古いスタイルのジャズで、この頃はヴァイオリンとギターが組んだ、軽快で楽しい曲が多い。中でもこの曲は、動画のように今でも若い人に取り上げられているし、自分でもやってみたいと思っている名曲だ。

ブログのカテゴリーにしている「パブリックドメイン名曲集」は、自分の知っている、いつか演奏したいと思ってるような曲を気軽に紹介しようと始めたものだが、これまでのほんの数年の間にも大きな変化が起こった。それもなんとなく窮屈な方向の変化が。

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李子柒 麻婆豆腐

当サイトで、なぜか来場者の多い李子柒シリーズ。畑に行くシーンから始まったのでもしやと思っていたら、大豆を豆腐にする所から始まった。枝豆状態の大豆を収穫していたが、畑で乾燥する前に生で使うということなのだろう。出来上がったのは、なかなかお目にかかれないほど硬い豆腐だ。
このシリーズは不思議なところがあって、伝統的な中国の生活文化を紹介しているのだが、いつも出てくる家の立地がよくわからない。麻婆豆腐が出たからと言って四川省というわけではなく、山西省の手伸ばし麺を作ったりする。画面の隅に花や果実のなった枝が映ることが多いが、それも旬や産地がバラバラな感じがする。そういうものにとらわれない、オール中国の桃源郷をイメージしたのだろうか。

ネットを調べると、タイトルはリーズーチーと読むらしい。「染」のように見えた文字は「七」だそうだ。「李子柒」という人名だと思う。四川省の田舎に祖母と暮らす女性という設定だそうだ。田舎暮らしのスキルが身についているが、他の動画を見ると故宮博物院の一室で、研究者と薬膳について話し合ったり、都市部にある自室でこの動画を編集していたりと、おそろくべき多芸多才ぶりである。特に作業する手付きが堂に入ってるので、吹き替えかとも思って目を凝らすのだが、本人が演じている部分も多く、見分けがつかない。視聴数は膨大だが、わずか5分ほどの、スポンサータイアップのしようもない内容にここまでの手をかけて、どうやってペイしているのか不思議でならない。

サターン5型ロケットのマニュアル

往年の宇宙少年の諸君、お待たせしました、宇宙スケールのお年玉である。NASAの誇る世界最大のロケットで、50年前に月面着陸を成し遂げたアポロ11などのアポロ計画で使用されたサターン5型ロケットのマニュアルが公開された。みんなもぜひ、以下からダウンロードして欲しい。

https://history.nasa.gov/afj/ap12fj/pdf/a12_sa507-flightmanual.pdf

今の人たちとちがって、我々の若い頃は人間が月に行くことが当たり前のように行われていた。
「おや、今度はアラン・シェパードが船長かい?バズ(オルドリン)にも、一度月面に立たせてやりたいねえ」
というような会話が、普通にかわされていたものである。
それを可能にしたのが、サターン5型ロケットである。全長110.6m、総重量2,721t、低軌道に118tの人工衛星を打ち上げる力を持つ。サターンの前にサターンなく、サターンの後にサターンなしとまで言われた、人類史上最大のロケットだ。高齢者が、「最近のロケットはみみっちくていけねえや」などと嘆くのは、こういうのを見てきたからである。

年をとってよかったなと思うのは、子供時代の夢のまた夢みたいなものが、こんな風に手に入ってしまうことだ。冷戦下の当時なら、これを目にできるのはエリートの中のエリート、トップレベルの機密に接触できる限られた者だけ。大統領だって、見られなかったかもしれない。そして、この一冊のために、東西両陣営の諜報機関が、虚々実々、血で血を洗う謀略を繰り広げていたに違いない。
ダウンロードしたからと言って、日常生活の役には立たないだろうが、それを言えば会社の業務マニュアルも似たようなものだ。上層部の皮算用が詰まっているものより、人類の夢と叡智と根性が詰まってるマニュアルのほうがずっとありがたみがある。