往年の宇宙少年の諸君、お待たせしました、宇宙スケールのお年玉である。NASAの誇る世界最大のロケットで、50年前に月面着陸を成し遂げたアポロ11などのアポロ計画で使用されたサターン5型ロケットのマニュアルが公開された。みんなもぜひ、以下からダウンロードして欲しい。
https://history.nasa.gov/afj/ap12fj/pdf/a12_sa507-flightmanual.pdf
今の人たちとちがって、我々の若い頃は人間が月に行くことが当たり前のように行われていた。
「おや、今度はアラン・シェパードが船長かい?バズ(オルドリン)にも、一度月面に立たせてやりたいねえ」
というような会話が、普通にかわされていたものである。
それを可能にしたのが、サターン5型ロケットである。全長110.6m、総重量2,721t、低軌道に118tの人工衛星を打ち上げる力を持つ。サターンの前にサターンなく、サターンの後にサターンなしとまで言われた、人類史上最大のロケットだ。高齢者が、「最近のロケットはみみっちくていけねえや」などと嘆くのは、こういうのを見てきたからである。
年をとってよかったなと思うのは、子供時代の夢のまた夢みたいなものが、こんな風に手に入ってしまうことだ。冷戦下の当時なら、これを目にできるのはエリートの中のエリート、トップレベルの機密に接触できる限られた者だけ。大統領だって、見られなかったかもしれない。そして、この一冊のために、東西両陣営の諜報機関が、虚々実々、血で血を洗う謀略を繰り広げていたに違いない。
ダウンロードしたからと言って、日常生活の役には立たないだろうが、それを言えば会社の業務マニュアルも似たようなものだ。上層部の皮算用が詰まっているものより、人類の夢と叡智と根性が詰まってるマニュアルのほうがずっとありがたみがある。