李子柒終了

中国の片田舎で、伝統的な食品や工芸品を自作する美女。数千万アクセスを誇るブロガー「李子柒」シリーズは、このところ長らく更新がなかったが、9月に入って、YOUTUBEからいくつかの動画が消え、本編がおいてあった中国の動画配信サイト「微傅」では、アカウントごと消えていた。思えば昨年ころから更新が不規則になり、内容的にも鮮度が感じられない内容になってきていた。誰かに口出しされている感じがあったが、どうやら経営面で関わった企業との間でトラブルがあった模様だ。

「角を撓めて牛を殺す」(小さな欠点を無理に矯正しようとして、本体を損なってしまう)とは、他ならぬ中国のことわざだ。大人気ブロガーにいろいろな組織や資金が関わってくるのは当然だが、もうすこしうまくできなかったのかと思う。当サイトでもカテゴリー化してきたので、流行現象の栄枯盛衰が目の前で見られて興味深かったが、少々残念でもある。

個人ブログではよくこういう事がある。これがマスメディアだったら、まず大人同士の手打ちがあって、舞台裏で大変革が起こっていても表面的にはそしらぬ顔で継続されたり、目立たないように消滅させるが、個人の場合は突然消えたり更新がストップする。それが政治的な内容だったりすると、つい気がかりな想像をしてしまうこともある。なかなか生々しいが、そのへんも新しいメディアの醍醐味かもしれない。

本家の微傅ではアカウントごと消えたものの、YOUTUBEでは、なぜかほとんどの動画が残っている。これもいつまで持つかわからないが、幸か不幸か、パクリシリーズがよりどりみどりで、どれもなかなかの視聴数を稼いでいる。パクりとはいうものの、料理や工芸をやって見せなくてはならないので、内容はそれなりに悪くない。むしろ本家の初期の素朴な味わいが感じられるものもある。「偽 李子柒 」カテゴリーを作って紹介しようかと思うほどだ。

I Love Paris

コール・ポーター(1891 – 1964)の作曲。

歌と演奏はTatiana Eva-Marie & the Avalon Jazz Band。演奏スタイルはもちろん、ファッションやロケーションまで、1930年代ヨーロッパの、ジプシー・ジャズの雰囲気を再現している。歌手はいかにも美女風のメイクで愛嬌たっぷりに、バイオリンはうつろな目で淡々と。ジャズと言いながらアドリブが3分未満しかない、ごく短い曲だが、どの一瞬を切り取っても絵になっているのが楽しい。エンディングに「ラ・マルセイエーズ」を持ってくるベタな演出も、ここまで徹底した世界観づくりの中だとピタッと決まる。
よく見るあのマイクも大事な小道具だが、調べてみるとこれはSHUREというメーカーのもので、プレスリーなどのほか、ケネディやキング牧師の演説にも使われ、現在でも大統領就任式に登場するのだという。

古い曲を現代のアレンジで演奏するのもいいが、こんな風に古さをそのまま演奏するのも楽しい。どれもコンテンツとして流通しているのだから、流行にかかわらず好きな音楽を選べるのが、現代のよさだろう。その点我々世代の人間は、若い頃から流行の音楽を追いかけさせられ、追いつけなくなって諦めてしまった感がある。古き良き時代の音楽は、その醍醐味を知る古き良き人間がもっと楽しんでもいいと思う。

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ベランダ・コンポストとニューヨーク・グリーンマーケット

驚異のバイオトイレから続く)
ダンボールコンポストは最初のうちは非常に効果があるが、使い続けているうちにだんだん匂いなどが出てくる。また、長く使えばどうしても寒い季節になってしまう。そこで、バイオトイレに倣って、熱を加える方法がないかと考えた。そこで思いついたのは、FF式ストーブの背面から屋外に突き出した排気筒の熱の利用である。
最初に言ってくが、これは消防法違反であり、マンションなら共用部分の占有にもあたる。だが、思考実験は面白いし、考え続けてさえいればそのうち画期的な解決法を見つけるかもしれない。ということで「ベランダ・コンポスト」の概要は、まずベランダに小さなビニールハウスを設置する。その中にFF式ストーブの排気熱を通す。パイプを通して、排気はさらにその外にするのがいいだろう。コンポスト本体も、いずれ蒸気で壊れるダンボールではなく、木箱にしたい。また、ダンボール・コンポストでは。どんなにかきまぜたつもりでも、箱の隅に混ぜきれずに石膏化してしまう部分ができるので、木箱の内部に袋を吊って、時折振って撹拌することにした。構想はここでおしまいである。

ところで、ニューヨーク市では、近隣の小規模農家の生産物を中心街の公園に集め、「グリーン・マーケット」を1976年から続けている。スーパーなどに並ばない珍しい野菜や無農薬野菜が集まるのだが、例えばパプリカだけでも数百種類が出回るということで、個人だけでなく、市内の創造的なレストランのシェフからも評価が高い。そのウェブサイトには、コンポスト部会のメーリングリストがあったので登録してみた。

というところで、この話はおしまいである。それでも皮算用だけは膨らんで、札幌市周辺の小さな無農薬栽培農家が市の中心部で露天販売し、それを買った人が残った野菜くずなどを自宅でコンポスト化し、さらにそれを無農薬農家に還元するシステムも考えた。使うのはあくまで無農薬野菜の調理クズだけである。調理された食べ残しなどを含むと塩分や食品添加物が交じるので、無農薬の畑には使えなくなってしまうからだ。いわば意識の高い人達の間だけで回るサークルではあるのだが、ニューヨークと同じように、露天そのものやそれらを使うレストランが新しい観光資源となって、停滞気味の中心部への動員にもなるのではないかと考えた。
バイオトイレでは、し尿処理の革命というような大規模な目的ではなく、屋外施設などでの汚水処理の解決に絞ったことで、水環境の保全を実現する発明が生まれた。自分もすべての生ゴミを処理するのではなく、無農薬野菜のクズという資源を運用する小さなサイクルなら作れるのではないかと考え、その構想をまとめていくために「グリーンマーケット・サッポロ」なるウェブサイトを作ってみたりした。

もっとアイデアが煮詰まったり、情熱があれば今頃「ベランダ・コンポストの父」になれたのかもしれないが、この歳まで生きていれば、この程度のタラレバな夢のかけらには事欠かないのである。