シン・ジャポニズム

西欧社会では過去に何度もジャポニズム=日本趣味が起こっている。19世紀後半のゴッホの絵画やプッチーニの蝶々夫人などが有名だが、明治の開国や日本製品の海外輸出、戦争、国際イベントなどのたびに、日本ブームが起こってきた。それらの中には日本人からすれば少々首をかしげたくなるようなものもあったが、今また、映画やゲームの世界で日本ブームが起こってるようだ。

今年ディズニープラスで配信された「SHOGUN」は、エミー賞18冠という過去最多受賞を果たした。見どころは厳密に再現された当時の衣装、セット、風俗・習慣などで、セリフの多くも日本語だ。だが日本作品ではない。近年は本家の日本で侍を正面から扱った映像作品がでてこない。アイドルを起用したいがために、頭を剃り上げずに現代の髪型のままチョンマゲを乗せたり、下駄でタップを踊ったり...。愚痴はともかく、SHOGUNは世界が久しぶりに見る、本格的ジャパニーズ侍ワールドである。
この精密な日本文化のブームは、2020年に発売されたプレステ用ゲーム「ゴースト・オブ・ツシマ」から始まったように思う。鎌倉時代、押し寄せる元寇軍に単身立ち向かう対馬の侍という、思い切り渋い設定で、細部まで厳密に再現された装束、武器などは映像だけでも衝撃的で、世界的なヒットになった。
そしてこのたび、ゴーストオブツシマのシリーズ第二弾である「ゴースト・オブ・ヨウテイ」が発表された。ヨウテイは羊蹄山のこと。1603年の、江戸時代初頭の蝦夷地が舞台らしい。いきなり北海道が出てきてびっくりだが、麓のニセコが道民もおいそれとは近づけないような国際的なリゾートになってるので、不思議ではないのかもしれない。映像は、クロサワが監督したの?と思うほど日本的である。

そんなふうに日本の歴史がクローズアップされるのはうれしいが、残念なのは時代劇のDNAが日本に残らないことだ。ポケモンやワンピースは今でも新作が公開され、作品世界や登場人物は常にバージョンアップされている。同じように時代劇を作り続けなければ、侍ワールドはハリウッドのものになる。大河ドラマを制作するのに、将軍やお局様の豪華な衣装や甲冑をハリウッドからレンタルし、江戸城大広間や、無数の人馬が斃れる関ヶ原などのCGデータを買うことにも。そうしないとクオリティで負けてしまうからだ。

※なんでもシンをつけるのは、かえってジジくさいかな?

タイトル画像の話 / ヴォイニッチ手稿

それほど面白い画像ではないが、ちょっとした技術的アイデアがうまくいったので公開してみた。

モチーフに使ったのはヴォイニッチ手稿。1912年にイタリアで発見された古文書で、240ページに渡って羊皮紙に図版と文章らしきものが書かれている。文字については、統計学的手法により全くのデタラメではないことがわかっているが、未だに解読されていない。作者も年代も不明で、人物は描かれているが裸なため、服装から時代を推定することもできない。

挿絵は博物図鑑のようでもあり、絵物語のようでもあり、素朴な味わいに満ちている。こういう役に立たないものが大切に保管されてきて、さらにインターネットで世界中に拡散してるのが面白い。なお、こちらから原本のダウンロードも可能だ。手元でじっくり見れば、謎解明のひらめきが訪れるかもしれない。

パーカー・ソーラー・プローブ、太陽への21回目の接近を完了

NASAのパーカー・ソーラー・プローブは9月30日に太陽への21回目の接近を完了し、太陽表面から約451万マイル(726万キロ)まで接近して自身の距離記録に並んだ。今回の接近観測が終わると、宇宙船はふたたび太陽から離れて金星の重力で最後の軌道変更を行った後、太陽への接近と観測を3回行った後は重力に捉えられて太陽に突入する運命にある。

2015年の発射時点では、随分先のことと思っていた計画の終了が見えてきた。宇宙船には、世界中から集まった一般人の署名データが搭載されていて、私もその一人である。ちなみに日頃当サイトでは個人情報につながる情報は慎重に避けてきたので、もし身バレすることがあるとすれば、この宇宙船から以外に考えられない。
それはともかく感無量である。だが今年10月、同じくNASAによる木星の衛星エウロパ観測船が発射されるが、ここにも署名させてもらった。宇宙は広く、人間の探究心にも限りはない。太陽が済んだら木星へ。漠然とした話で膨大な費用もかかるだろうが、同じロケットなら他国に落とすより宇宙に飛ばしたほうがマシだろう。ささやかな署名だが、少しでも後押しできればいいと思う。