大型原子力空母はアメリカの軍事力の象徴だ。日本でも所有すべきかどうかの議論もあるようだが、推進派も反対派も、空母を実際以上に強力で万能と思っているような気がする。空母自体の防衛力は低く、航空機の離着艦は非常に難しい。ジェット機の離陸には1000mの助走が必要だが、空母の滑走路は最長でも300m程度。なので離陸時は風上に向かって全速力で航行し、さらに一種の大きなパチンコで射出し、着艦はワイヤーにひっかけて無理やり停止させる。滑走路にはそのための仕組みが設置されているので、甲板が壊されただけで収納した航空機は飛び立てなくなり、飛行中のものは帰艦できなくなる可能性がある。小さなミサイルひとつで、空軍基地がまるまる無力化されるのと同様のリスクだ。
空母の活躍の場も減っているように思える。そう感じたのは東北大震災後の福島救援活動「トモダチ作戦」に、空母ロナルド・レーガンが参加したときだ。志願兵たちは、「通常の何倍もの放射線を浴びる可能性がある」との説明に、「お買い得であります」と答えたという。アメリカ軍らしく勇ましくも感動的でさえあると思ったが、一方で戦争と関わりのない場面での出動だけに、もっと軽便な艦でヘリ輸送をしたほうが合理的で、無理に見せ場を作っているように思えた。
空母を実戦に運用したことがあるのは、大海戦を経験したアメリカと日本だけだとも言われている。それ以外の国の空母はお飾りとは言わないが、精密誘導兵器の時代に、維持コストが見合わなくなってきても不思議はない。ロシアでは最後まで残っていた空母を廃止することにしたらしい。アメリカでも今後大型空母を増やす計画はなく、小型や中型と垂直離着陸機との組み合わせにシフトしていく。
かつて空母が横須賀などに入港するたびに反対派が詰めかけた。強大な軍事力の象徴だったものが、いつの間にか存在感を失っているとしたら不思議な気分だ。今ならさしずめ大型のAI計算センターのほうが、大きな軍事的脅威なのかもしれない。



