Amazing Grace/リハーモナイズ

リハーモナイズとは、元の曲のコードを作り変えて自分なりの音楽にすること。渡辺貞夫が名著「ジャズ・スタディ」を書いてから、いろいろなコード理論の本が出版され、また、ネット上にも教則サイトがあるが、これがなかなか難しく、私も挫折した口である。コードに新しい音を付け加えると、新たな名前のコードになる理屈はわかるものの、単音の楽器では音色を確かめようもないし、鍵盤楽器で試しても、曲の流れの中でどう使うかが分からない。半信半疑で出した音は、汚い和音にしか聞こえなかったりする。

Amazing Grace 6パターンのリハーモナイズ

ここで紹介するのは、名曲Amazing Graceを、シンプルな3和音から複雑なコードを駆使した演奏まで、6通りに作り変えてみたものである。有名アーチストのスタイルをなぞったものもあるらしいが、原曲の中からコードの違いを聞きとることは難しい。こんなふうに、メロディに対してシンプルにコードを弾いてくれて初めて違いがわかる。もちろん、なんとなくでしかないが。
リハーモナイズされた曲調に対し、アレンジを加えて歌い上げるシンガーがまたうまい。ジャズやポピュラー音楽は、歌手やリード楽器だけが個性的な演奏をしているのではなく、和音を担当する楽器パートも、演奏の個性を作り上げているのだということがあらためて伝わってくる。。

楽器を始める適齢期

楽器は子供時代から習わせないと身につかない、という意見を聞く。確かにクラシックの巨匠たちはみんなそうだろうが、一方で、無理に習わせられて楽器嫌になった者も多い。巨匠の数と楽器嫌いを比べれば、楽器嫌いのほうが圧倒的に多いだろうから、子供時代から習わせるのは科学的に間違いということになる。そもそも楽器は楽しみのためのもので、忍耐力養成器ではない。

では10代はどうだろう。この時期に楽器を持つ人は多いし、ポピュラー音楽の大スターでも、この時期にスタートした人は多いだろう。が、必ず周囲に自分より上手いのがいる上、さほど「モテる」わけではないと気がついて、なお練習を続けられる者は少ないだろう。「そんなことをしてる暇があったら、勉強しなさい」という親の意見は、おおよそ正しい。

20代、30代は、仕事が面白くなってくる一方、パートナーとめぐりあう時期である。学校だけではわからなかった本当の勉強を身につけるのも、この時期だ。それまで楽器をやってた人でさえ、疎遠になるのが普通だ。聞くことはあっても、とても練習どころじゃない。

40代、50代は、家族、地域社会、職場、日本経済など、あらゆるものに対する責任を果たす時期だ。遊んでいてもらっては、誰かが必ず困ったことになる。ただし、楽器を買うだけなら大賛成だ。楽器を好きな人にとっては、眺めているだけ、磨いているだけでも、他には代えがたい喜びが湧き上がってくるはずだ。いつかは練習に打ち込める日が来ることを夢に見て、過酷な日々を乗り越えられるのなら、安いものである。

そして、60代。結論から言うと、楽器を始める適齢期である。リタイアした人もそうだが、現役の人だって、若い頃のような無我夢中で仕事に打ち込んでるわけじゃない。そんな歳になってまで、毎日死に物狂いというようでは、職場や顧客が不安でしょうがないだろう。
一方、若い頃と違って、血迷ってスター街道を夢見てしまうことがない。武道館だのオペラ座など、頭にかすめさえしない無心の境地で練習に打ち込める。さらに音楽に無縁の仕事人生であっても、打ち合わせの喫茶店のBGM、TVドラマその他諸々で、ありとあらゆる音楽を聞いている。その膨大な音楽体験は、幼児や10代とは比べ物にならない。しかも、様々な困難をくぐり抜けてきた経験に比べれば、楽器の練習はずっと楽で、予想よりずっと早く成果が出るはずだ。何より、車やマイホーム、子供の教育費に比べれば、桁違いに安い。幸せには代償が必要だと知り抜いてる身には、申し訳ないくらいの少額で、幸福感と高揚感を得るだろう。

I can’t give you anything but love

Jimmy McHugh(1894-1969)の作品だが、実に惜しい。作曲家の没年からわかるように、まさに今年2019年にパブリックドメインになるはずの曲だったが、「平成30年著作権法改正」により、昨年ギリギリで権利期間が伸びてしまった。今年になったら紹介しようと思ってリストアップしていたのだが。


これは、「ジプシー・ジャズ」と呼ばれる古いスタイルのジャズで、この頃はヴァイオリンとギターが組んだ、軽快で楽しい曲が多い。中でもこの曲は、動画のように今でも若い人に取り上げられているし、自分でもやってみたいと思っている名曲だ。

ブログのカテゴリーにしている「パブリックドメイン名曲集」は、自分の知っている、いつか演奏したいと思ってるような曲を気軽に紹介しようと始めたものだが、これまでのほんの数年の間にも大きな変化が起こった。それもなんとなく窮屈な方向の変化が。

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目を瞑って弾いてみる

スティービー・ワンダーやレイ・チャールズなど、ピアノやキーボードには、優れた盲目のアーティストが存在する。バイオリンはどうかわからないが、試してみることにした。音程もめちゃくちゃで、隣の弦を弾いてしまって雑音だらけになるだろうと予測していたら、思ったよりも上手くできた。チューナーが見られないので正確なところはわからないものの、音程もそれほど狂ってないような気がする。隣の弦との角度も案外身についていたようで、引っ掛けることも少ない。これなら、絶えずチューナーや弓の角度をキョロキョロ見ながらより、ずっと集中できて良い。

と悦に入っていたら、キーキーというイヤな音に変わってきた。目を開けると、弓の角度が曲がって、ブリッジに近い部分で弾いていた。要は右手の弓の持ち方がきちんとできていないため、ずれていったらしい。やはり目を瞑ってもできる、という具合にはいかなかったが、きちんとできてない部分がわかっただけ試した価値はあったと思う。

ビギン・ザ・ビギン

コール・ポーター(1891-1964)の名曲を、我がネット上の師Christian Howes氏と、ジャズギターのレス・ポールで。タイトルの「begin the beguin」は昔から知ってはいたものの、意味がわからなかったので自動翻訳にかけると「乞食をはじめよう」となってしまった。

この優雅なメロディが、そんな意識の低いタイトルのわけがないとよく調べると、beguinはカリビアンミュージックのリズム名だった。そういえばそんなのがあったような気がする。社交ダンスなどではポピュラーだったはずだ。ひと安心。
演奏はビギンのリズムで始まり、サビの部分でフォー・ビートに変わる。これがビギンだよと教えてくれてるような、ためになる動画だ。

さて、パブリックドメインの名曲を順番に取り上げて、ブログのカテゴリーとして立ててきたが、ここに来て有名なものや好きな曲が出尽くしてきた。もともとは有名で気に入ってる曲なら、最初から頭に入っているのでバイオリンの練習にも好都合だろうと思って集めたものだ。同じ曲でも、バイオリンの模範演奏になるものや、面白いプレイヤーによる演奏、変わった演出のもの、しかもできるだけ違う作曲家や違うプレイヤーの動画を選んできたが、それも限度がある。作曲者で言えば今回のコール・ポーターは三度目の登場だ。
古い曲というだけなら民謡や賛美歌など、まだまだいくらでもあるが、自分が知らない、思い入れのない曲を紹介しても仕方がない。これからは同じ作曲家の作品も増えてくるかもしれないなあと思っている。

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