ビブラート

noicantビブラートという奏法がある.奏者が弦を押さえた指を前後に振動(?)させて,音程を上下させて震わせる.動画を見ると,大抵のバイオリン奏者がこれをやっている.いかにもバイオリンらしい,華麗な音の響きが生まれるのだが,どう考えてもできそうもないので,全く手をつけずに来た.
だが,ここにきてバイオリン関係で書くネタがつきてきた.それなりに練習してそれなりに成長し,楽しんではいるのだが,そこらへんを言葉で説明できない.そこでついにビブラートに手を出すことにした.これなら,悪戦苦闘ぶりを記事にできるだろうと思ったのだが.

これが実にまったく,予想を超えた出来なさぶりなのである.左手をグリグリと前後に動かすと,つられて右手の弓も動いたり止まったりする.その前に,手首が固くて前後に動かない.動いたとしても音程はちょっとも変化しないし,手首も腕の筋肉も痛い.ムダな力とムダな緊張,そしてどこかに大きな勘違いもあるのだろう.長年生きてきた経験や知識が,気持ちいいくらい何の役にも立たない.役に立ったのは「出来そうもない」という最初の予感だけだ.初心者向けの動画では,ビブラートの動きは,ドアの前で手を伸ばして指の第二関節でコンコンとノックする,その動きなのだそうで,最初はうんとゆっくりでいいという.でも,それが出来ないのだ.
さあ,どうなる?はたしてできるようになるのか,この先せめて記事にできるようなことがあるのか?

次回「サンダーバード秘密基地」(8/23公開予定)
乞うご期待!

荒くれ男のバイオリン

前回書いたように,激安バイオリンの容貌はなかなかすさまじい.決して人前で演奏したりするべきではないシロモノなのだろうが,これを見ていると,村上水軍の使った刀を思い出す.普通の日本刀は刃先等に硬い鋼,中心部に柔らかい鉄を合わせて鍛造しているので,切れ味と柔軟性を兼ね備えていると言われているが,村上水軍の刀は軟鉄だけでできていた.釘と同じようなもので,曲がりやすい分,分厚く作っていた.すぐだめになったろうが,斬れる分にはとにかくよく斬れたという.

海賊バイオリン日本刀の表面は固くてツルツルしているために,きちんと刃先が当たらないとはじかれてしまう.そのため実戦の前には砂の山に何度も突き刺して,表面を荒らしてやらなければならないが,軟鉄の刀は,そのままでざっくりと肉に食い込んだと言われている.
上等な日本刀を潮でサビさせてしまうくらいなら,惜しげのない安物を手下に行き渡らせ,壊れたり紛失したらすぐ買う.それも戦略だ.我が激安バイオリンも,名手に使われたり博物館に飾られることはないが,無作法な荒くれ男には似つかわしい得物だ.

次回「ビブラート」(8/19公開予定)
乞うご期待!

 

激安バイオリン細見

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本来のパフリング(purfling)

わずか8千円の激安バイオリンを1年以上使ってみると,さすがに激安の激安たる所以が見えてくる.それよりやや値の張るビオラを手に入れたので,その差は歴然だ.

まず上下2枚の板は,合板の型押し成形だろうと思う.中を覗き込んでも,刀による彫り跡や表面と同じ木目が見えない.胴体の周囲をぐるっと縁取る黒い線=パフリング(purfling)が,本来は黒くて薄いリボン状の板を象嵌したものだが、激安の場合は印刷か書いたものだ.

また,そのパフリングの部分は,本来なら上板がかなり彫り込まれて,ずーっとくぼみになっていて,その分楽器の外縁はせり上がってるくらいでなければならないが,激安はそのへんが平坦である.プレスだから手で彫るような細かい造形はできないのだろう.

塗装もつや消しで,バイオリンらしい透明感と深みのある色合いではない.同じメーカーが同価格で,カラーペンキを塗って仕上げてたものを出してるくらいだから,そもそもが木目のプリント合板なのかもしれない.

これではさすがに,バイオリンの名に値しないと言われてもしかたがないが,音は気に入ってる.最初からオペラ的な美声ではなく,浪花節のだみ声が気に入っていたのだが,むしろだんだんこなれた,いい音になってきているような気がする.

音といえば,激安バイオリンはすぐ音が出しやすくなったような気がする.からっ下手からのスタートなので確かなことは言えないが,こなれるまでに時間がかからなかった.すぐに毎日調律しなくても音程が変わらなくなり,多少松脂が薄くなっても,するすると音が出るようになった.あくまで推測だが,高価な楽器は,慣らし運転の期間にもう少し手こずるのではないかと思う。
多分,きちんとした職人の手作りのものに比べると,その分寿命が短いのだと思う.楽器全体にかなり強いテンションがかけられ続けているので,昔ながらの素材や工法を使わないものは,突然どこかが割れたり裂けたりしてもしかたがない.

まだ自分でわからないだけで,他にも欠点はあると思うのだが,一方なんと自分向けの楽器だろうとも思う.あともう少しの間がんばって音を出してくれればそれでいいし,他人に譲るようなものではないから,最後は捨ててもらって何の惜しげもない.あたら高価な新品を手に入れて,下手なせいできちんと慣らしが行われずに,ポテンシャルを引き出せないまま終わらせてしまうのに比べれば,ずっとましなことをしていると思う.

次回「荒くれ男のバイオリン」(8/15公開予定)
乞うご期待!