斧は忘れる、切り株は忘れない

斧は忘れる、切り株は忘れない
このカテゴリーではお気に入りの映画の名台詞を紹介してきたが、これは格言だ。たしかレバノンのものだったと思う。捉え方で2通りの意味があって、自分が斧だと思う人には名言だが、自分が切り株だと思うなら、果てのない恨みの根と紛争の芽だ。互いに生まれてもいない時代の出来事について非難しあい、生まれて間もない者を犠牲にしてまで紛争を続けることになる。あの連中以外の人は、ちゃんと忘れたふりをして生きているのだが。

人生は鶏の尻、今日は卵、明日は糞
これはアフリカのことわざ。「アフリカ」とひとくくりにするのは好きじゃないが、国名は忘れてしまった。それならばと、ザルを持って待ち構える人と、ほうきを手にして追いかける人に分かれるかもしれない。

座右の銘は、必要な時に座右にあった試しがない
これは自作。「あのときこの言葉を知ってたなら」とか、「ちゃんと自分に言い聞かせていたはずなのに」とか、とにかく大きな代償を費やした挙げ句に出来上がったものだ。

ところで最近は我ながらよくウソをつく。同世代の女性には「おや、どこの娘さんかと思った」くらいは言うし、昔の同級生になら、運動部に入っていただけで「スポーツ万能だった」、友達が何人かいたというだけで「クラスの人気者だった」という調子である。
この歳になるとだれも褒めてくれない。赤ん坊の時のように立って歩いただけで絶賛して欲しい、とまでは言わないが、実情は立って歩くだけで結構つらい思いをして頑張ってることもある。だからみんな見え見えのおべんちゃらでも、「またまた、冗談ばっかり!」とか言いながら、かなりうれしそうだ。間違ったことを言ってるかもしれないが、間違ったことはしていないと思う。
でも本当の年寄りのウソは、もう少し情けないものである。

年寄りの言葉はウソまみれだ。届かなかった夢や果たせなかった約束が多すぎて、とても現実を直視できないから
これも自作だ。

生命は道を見つけ出す

ジュラシック・パーク第一作で、カオス理論の研究者マルコム博士の言った言葉。映画ではこの言葉通り、メスしかiいないはずのパーク内で、いつの間にか凶悪な恐竜たちが自然繁殖してしまう。
最近アメリカの研究チームが、突然変異できないよう最低限度の遺伝子だけでできた細菌を人工的に作り出した。が、進化できないはずのこの細胞は、300日で人間の4万年分に相当する猛スピードで世代交代し進化した。生命が生き延びようとする力は、人間の考える理論を超えてゆくという、映画さながらの出来事である。

脅威的な変異を起こす生命体といえば、どうしてもコロナのことを思わずにはいられない。武漢株の段階ですでに強力な感染力を持っていたが、デルタ、オミクロンと変異するごとに感染力を増してきた。現在は5類になって感染状況が公表されなくなったが、第9波が来ているとも言われている。コロナにはかなわなかったのかもしれない。
その昔私は、人間こそが百獣の王ではないかと考えたことがあったが、ライオンなど絶滅寸前のひ弱な種である。それに勝った程度では、まだまだ人間の上に、無数のウィルス類がランキングしているような気がする。

が、コロナがそうであるように、人間も生命だ。必殺のワクチンで根絶やしにはできなかったかもしれないが、医療現場の対応や個人の対策など、あらゆる手段でしぶとく道を見つけ出し、生き延びるだろうとも思う。映画で観たときは、普通に名言と思っただけだったが、コロナを経験して、その深さを改めて知ることができた。

「結果が求められるときに、その想像力のなさが問題なのだ」

スターウォーズの外伝「スターウォーズ7クローン・ウォーズ」の中の、ダース・ベイダーのセリフ。
帝国に支配されたとある惑星で、帝国軍の将校が逮捕直前まで追い詰めた手配中の反対勢力のメンバーに逃げられてしまう。ベイダーにその報告をした際に、自分は定められた手順に従っていたと弁解するのだが、ベイダーは「結果が求められるときに、その想像力のなさが問題なのだ」と言って処分してしまう。でれっと眺めていた番組で、突然含蓄の深いセリフが出てきて居住まいを正した覚えがある。

何しろ帝国なのでパワハラの極みではあるが、一般社会でも、政治以外の場面は、民主的でなければならないわけではない。企業だけではなく今では役所も結果が全てだ。想定していない出来事が常に起こり、良好な結果のために、現場ではルールや指示内容を逸脱しなければならないことも起こる。むしろそういう場合、ときにはルールを逸脱する判断をしてもらうために人間を雇っているのだとも言える。

私の世代は、度胸と根性と誠意さえがあればどんどん業績が上がった時代を知っているが、今となっては夢物語である。労力であれ資金であれ、技術力であれ、資源を最大の効率で生かさなければ組織は生き残っては行けず、そのためにはきめ細かいルールが欠かせない。とはいえ、保身のためにマニュアルを求めるのは少々疑問だったのだが、さすがはベイダー卿、一刀両断である。