アル・デンテ

昭和の話だが、ある日突然のように料理番組などで、スパゲティの茹で方は芯を残した「アル・デンテ」が正しいと言い始めた。それまでのスパゲティといえば、茹で置きの麺をケチャップで炒める軽食喫茶風か、茹でてミートソースを乗せて出すものが多く、ふにゃふにゃだった。歯ごたえのある麺は悪くはないが、白い部分の残った断面を見せて説明されると、消化によくなさそうな感じである。江戸っ子がソバの先端だけつゆにつけて食べるのと同様な、イタリアのローカル・ルールかと思っていた。

だが、イタリアの料理動画を見ると、ソースの中に実に大量の茹で汁を入れている。その中にスパゲティを入れてからの時間も長い。水と一緒にソースの味を吸い込ませるので、アル・デンテに茹であげても、仕上げは結局芯のない常識的な硬さになる。だからイタリアでは、茹で上げたものにソースを乗せただけの、いわゆる「スパゲティ・ミートソース」式のメニューもない。
ちなみに、動画でやっているような、オイルと茹で汁の水分、含まれている僅かなデンプン質を、熱を加えながら混ぜて乳化させる技術は、昔は日本では知られてなかった。正直、それをやってどれくらい味が変わったか、よくわからない。

※イタリア語なので、自動翻訳するとわけがわからないことを言ってる部分も多いが、そのへんは異国情緒ということで。また、動画中で紹介されるURLは、音声を字幕化したものなので正確ではなく、警告が出る。この人のレシピ紹介サイトを見たい場合は、Casa Papagallo へ。

餅考

年々正月らしさが感じられなくなってきた。歌合戦もおせちも、もともと好きというわけではなかったせいもある。が、餅は別で、雑煮でもキナコ餅でも大歓迎なのだが、年中食べたい時に切り餅を買ってしまうので、やはり正月らしさが希薄になってきた。つまり正月らしさがないのは、自業自得ではある。

子供のころでも、餅つきは珍しかったが、臼や杵のある家や、腕に覚えのある人が大勢いたので、誰かが声をかければすぐ餅つきイベントはできた。また普通の家では餅屋で買うか、もち米を持ち込んで搗いてもらう「ちん餅」を利用していた。
その後電動餅つき機が発売されたが、これはかなりのヒット商品で、特に年寄り世帯では年中餅が食べられると言って、こぞって買っていた。当時の家電は、テレビ、冷蔵庫、電子レンジと、新しく登場した製品を買えばその分必ずといっていいほど生活が向上する、夢のある商品だった。
餅つき機は我が家にもあったが、仕上がりやややキメが粗く、水っぽかったので、道産米のせいか所詮機械の限界かと思っていた。ところが年寄りが使うと、杵つきと遜色のないものができあがる。含水時間やつきあげ時間などを工夫したのだという。長年餅に慣れ親しんできただけに要求水準が高く、弘法筆を選ばずということになったようだ。
そしてパック詰め切り餅が発売されたのは、それよりもさらに後のことである。餅つき機のほうが開発が難しそうだが、適切な湿度などを保つパッケージが難しかったらしい。これも当初は年末商品だったが、今では年中買える。朝食はトーストにしようか、餅にしようかという手軽さだ。

そこでもし自分が、「餅は正月だけしか食べてはならぬ。このこと代々申し伝え、ゆめゆめ違うことなかれ」と遺言したらどうだろう。先祖(自分)は恨まれるかもしれないが、子孫はさぞかし正月が楽しみになるだろう。また、(自分同様)罰当たりがいて、いいつけに背いて餅を食べたら、それこそ禁断・背徳の味で、これまたさぞかし旨いだろうと思う。

100均スキレット&魚焼きグリル

100均スキレットがいいという記事を書いたら、なかなかのアクセスがあった。そこで今回は「グラタン編」である。

刻んだタマネギをバターで炒める。鋳物だとテフロンのように煮えたようになったりせず、程よい焦げ目ができ、また多少目を離しても食べられないほどに焦げたりしない。バターも同様で、普通のフライパンでバターだけで炒めものをすると焦げるのでオリーブオイルを足したりするが、スキレットはバターだけでも焦げず、まるでレストランの仕込み時間のような濃厚な香りが漂う。そこへ、小麦粉を入れてさらに炒め、牛乳を注いで混ぜながら火を通す。
牛乳は多いほうがよく、シャバシャバになったのをふつふつと煮詰めて粘りを出す、というのを何度か繰り返す。バターの油と少量の小麦粉の中に、大量の牛乳を閉じ込めるのがベシャメル類の王道で、生クリームの厚化粧でごまかしてはいけない。途中でナツメグを削って(※)入れるが、そのタイミングはいつでもいいだろう。
こうしてできたソースに茹でたマカロニを加えて和えたら、かき混ぜるのをやめてそのまま焼いてゆく。縁に焦げ目が見え始めたら、シュレッドチーズを乗せて魚焼きグリルで焼くのだが、仕上がりを見れば直火の威力を痛感することだろう。オーブンであれ、トースターであれ、電熱では絶対に作れない理想の焼き上がり。それが魚焼きグリルの真価である。魚離れや煙の敬遠などで、一時期魚焼きグリルの出番が減っていたようだが、今では専用のクッキングトレイもあるくらい、再評価されているようだ。

※ナツメグはホワイトソースや肉類に欠かせないが、瓶入りのパウダーを買うと残り少なくなった頃には風味がなくなる上、ナッツ類のカビは発がん性が高い。そこでホールで買って、100均のステンレス製のミニおろし金と一緒に、小さい密封容器に入れておく。ナツメグの実は硬いようだが、サクサクと削りやすく、毎回新鮮な香りを味わえる。