ペグでの調律

バイオリンの調律は難しい。ギターのようにギヤ式ではなく、ヘッド部分の穴に木製のペグを差し込んでるだけなので、少しずつ回すことができない。木と木の摩擦だけで止まっているので、弦が巻き戻らないよう、相当きつく押し込まなければならない。ペグのつまみ部分も小さいので、力が入りくいし、手が痛くなる。トルクを与えてやればよいだろうと思って、小さなレンチで挟んで回してみたが、簡単に回ったがするりと抜け出てしまった。押し込み方向に力をかけられないからだ。

そこで激安バイオリンには、4本の弦の底部にファインチューナーがついていた。ペグで大まかに合わせたら、このネジで細かく調節するのだ。ところがなぜかまっとうなバイオリンには、このファインチューナーが、1本の弦にしかついてない。2台目のバイオリンもそうなっていた。残り3本の弦はペグだけで調律するものらしいのだ。全部の弦にファインチューナーを取り付けようかとも思ったが、女性バイオリニストもやってるのだから、ちょっと頑張ってみることにした。それでわかったのだが、弦はたいてい低くなっている。そこからじわじわと巻き上げていくのは不可能なので、まずちょっとだけ緩める。これは簡単に緩むので、そこからえいやっと一気に巻き上げる。止まった位置で当たればOK、違ってればまた緩めてえいやっとやる。これを繰り返すのだ。やっていればそのうち当たるが、何度やってもコツや熟練には関係ないような気がする。

ボザノバとサンバの練習法動画

バイオリンなどの擦弦楽器による、ボサノヴァの指導動画である。演奏しているChristian Howes氏は、バークレー音楽院のポピュラーバイオリンの先生だ。ネットでの指導に熱心で、私も何冊かテキストを買い、動画で勉強させてもらっている。バークレー音楽院といえば、渡辺貞夫以降、多くの日本人ジャズメンが留学した、ジャズの聖地である。Howes氏は、さらにSKYPEにより個人レッスンも受け付けているが、流石に恐れ多いので受けたことはない。

この動画では興味深い装置を使っている。足元のループペダルで演奏中の音を適宜切り取ってループ再生させ、その上に次々と新しいフレーズを積み重ねて、複数のパートからなる伴奏部を即興で作り上げている。現代ならではの、音楽の楽しみ方だと思う。

また、英語の説明なのでわかりにくいが、ボサノバやサンバの、異なる楽器のパートを声と手拍子で合わせる練習法を紹介している。もちろんパートごとに違うリズムなので、簡単にはできないが、非常に力のつくトレーニング法だ。

音痴

世の中に、真の音痴という人はいないのではないかと思う。歌の下手な人はいるが、音楽が好きで良く聞いてる人は多い。そういう人も、石川さゆりとサッチモを、ちゃんと聞き分けられているはずだ。だから自称音痴の人も、頭の中では正確な音楽が鳴り響いていて、単に歌う訓練ができてないだけだと思う。もし、自分の歌うひどい歌と同じようなものが聞こえているなら、そんな曲は好きにならないだろう。上手い下手は、音感やリズム感というより、練習量の違いだけ。それもきちんと習わなくても、カラオケや日常の鼻歌程度でそこそこうまくなるのではないだろうか。

楽器の演奏も似たようなもので、プロになるならともかく、自己流でも自分で満足がいくレベルまではいけるんじゃないか、そうならいいなと思っている。歌で言えば、カラオケで場をぶちこわしにせず、社交辞令の拍手をもらえるレベルだ。むしろ、なんとか先生に何年習ったという、妙に本格的なキラキラ星を聞かされても、周囲が困るだろう。
途中つっえようが、テンポを外そうが、勢いと愛嬌で押し通し、手拍子でももらってしゃにむに盛り上げる。そんな訳あり商品のような演奏ができれば十分だと思ってる。