バイオリンの弦を一新した。本当はもっと頻繁に張り替えないといけないらしいのだが、一旦治まった弦は、調律しなくても音程が狂わないので、面倒がって放置してきた。
ebayで、アメリカ製のフィドル用のスチール弦をみつけたので、換えてみたくなったのだ。価格は4本で千円ほどで、もちろん高級品ではない。だが日本でこの価格だと最低ランクだが、ebayでは、これより安いものもたくさんあった。また、フィドル用と銘打ったものは日本にはない。
これまでのはスチール弦で、4本とも針金状だったが、今回のは低いほうの2弦に、ギターのような細線が巻きつけてある。芯はスチールだと思うが、巻いてあるのは白い線なので、樹脂かもしれない。この糸巻き線の弾き心地はそれまでとはだいぶ違って、押さえた時に横滑りがしにくい。ゴマかしがききにくい分、指先をしっかり受け止めてくれる感じがする。音色は明るさと強さがでて良くなったと思う。各弦が音程が違っても均質な音色が出るようになった気がする。単に前のが劣化していただけかもしれないが。
弦の張替えとなるとやっかいなのは調律だ。バイオリンの糸巻きは木の穴に木の棒を差し込んであるだけなので、力を込めて押し込みつつ回さなければならない。それも角度にすれば1度もないくらい微妙な回転だ。行き過ぎ、戻り過ぎをいやになるくらい繰り返し、まぐれでうまく合うのを待つ。何度やっても慣れたり熟練しそうにもない、徒労感のつきまとう作業だ。
弦にファインチューナーという微調整装置を取り付けることもできるが、一般的には一番高いE弦にしかつけない。すべての弦につけると便利なのだが、いかにも初心者用の廉価版楽器に見えるので、自分も格好つけてE弦だけにしている。調律にくたびれてきて、こりゃ次回から全弦にファインチューナーをとりつけようか、と癇癪を起しかけた頃になぜかぴたっと調律が決まる。
思い起こせば最初に調律をしたときは、音程が上がった下がったでハラハラドキドキで、ぴたっと決まったときにはちょっと感動したものだ。それが今は、面倒だからさっさと済ませたいとしか感じない。うまくなったわけでもないのに初心は忘れ、熟練ではなく悪びれただけである。自分はなんて人間的なんだろうと思う。
送り主の住所をストリートビューで見たら、高架下の鉄材置き場(?)