手打ちうどんのすすめ

米の値段が高止まりしていて釈然としないが、代わりにうどんの消費が増えているそうだ。関連業界は自ら消費者の米離れを加速させてしまったかもしれない。せめて「消費者が米を食べられないなら、自宅用もすべて出荷する」という昭和気質の農家が一軒でもいれば、消費者の憤懣もある程度和らいだかもしれないが。

それはともかく、米が高いならうどんを食べればいい。それも自家製なら、米価格の上昇分をカバーできるくらい安くつくし、健康的で味も良い。しかも作り方はネットでいくらでも見つかるが、そこにはちょっとしたコツがある。

小麦粉:中力粉を使う。置いてないスーパーも多いが、ある場合には薄力や強力より安い。薄力と強力を半々に混ぜるレシピもあるが、そこまでしなくても薄力だけでいい。逆に強力だけというのは、固くてのすのが大変なのでやめたほうがいいかもしれない。
塩:いらないような気がする。あっても良いが茹でる際に抜けてしまう上、味のあるつゆに入れるのだから、なくてもわからない。それどころか、「隠れ塩分」がないので、高血圧の人にも良い。
こね方:あるていど生地がまとまったら、米袋に入れて踏む。スーパーバッグ程度だと、破れることがある。踏んで伸ばして、手でまとめてまた踏むのを5~6回繰り返し、ラップでつつんで冷蔵庫で一晩寝かせる。
のし方:動画などにあるように、むりに四角くのそうとしない。あれはプロの技なので、できるようになるまで年季がいる。そこに至るまで不満を感じながら作ってると、そのうち嫌気が差してやめてしまう。素人が職人芸を気取って際まで四角い生地を作ろうとしている間に、プロは端っこの丸い部分を切り取って次の生地に混ぜ込んでしまう。
太さ:なるべく細く。さぬきうどんなどの太い麺をイメージして切ると、茹で時間が延々とかかった上、茹で上がりが驚くべき太さになる。
切り方:レクチャー動画だと生地の角をキチンと出して4つ折りに畳んでから、幅を揃えて切っていくのだが、下記の図のように、ルーズな作り方でも十分うまい。


その他:余分なものの入っていない手打ち麺で麦の風味がするのは当たり前。粉の風味は挽いてからの時間で急速に劣化するから、こだわりの材料店の在庫期間の長い銘柄小麦粉より、回転の早いスーパーの普通の小麦粉のほうが、麦の風味が豊かな気がする。また、生地を踏むからといって、踏まなければならないほど硬い水加減にする必要はない・そういうのはのすのが大変だし、茹でてもいつまででも芯が残る。

うずまきクッキー

浅い缶にいろいろな形のクッキーが詰め合わせになっている、アソートクッキーというのがある。自分で買うものというより贈答用だったり、人様の家に伺った時にお茶と一緒に出てくるもので、形も味も、知らない人は少ないだろう。また、自分で作ったことがなくても、金太郎飴状にまとめた生地を薄く切るのだろうというのは見当がつく。
これは動画のおすすめで偶然見たトルコのクッキー。今まで見たことのないうずまき形なのだが、サムネイルをながめても作り方が全く見当がつかなかった。
※前半は粉の調合などで、成形シーンは後半

ハインツ

ハインツは世界有数の食品メーカーであり、特にトマトケチャップが有名だ。よくアメリカ人は何にでもケチャップをかけるなどと言われるが、そのケチャップはハインツのことだと言っていい。日本でのシェアは10%程度なので、誰もがおなじみの味ではないかもしれないが、トマト風味が濃くクセがないので、ピューレがわりに使うこともある。そのハインツの歴史を描いたドキュメンタリー動画を見た。

産業革命後のアメリカでは、都市人口が急増し周辺地域からの生鮮食品の供給が追いつかなくなった。市場には、鮮度が落ちた肉や野菜がならび、また食品添加物に関する規制そのものがなかったことから、さまざまな薬品を添加した加工食品が生まれた。
創業者のヘンリー・J・ハインツは、15歳から自家製のホースラディッシュの瓶詰めを製造販売したが、当時の瓶詰食品が内容物を見せないために色の濃い容器を使っていたのに対し、透明瓶を使って安全性をアピールした。
その後現在も本社のあるピッツバーグに大規模な工場を建て、トマトケチャップの大量生産を始めた。その際、工場だけでなく従業員の住宅や学校なども含む、ひとつの集落を作ったという。またこの工場では、フォードに先立って製造に電力とコンベアによるライン方式を導入した。

アメリカの食生活といえば、パッケージされた大手メーカーの加工食品を多用する印象がある。炊飯器を発明してまで自宅での調理にこだわってきた日本人にはなじみにくいが、アメリカ人が食に無頓着というわけではない。消費者は食品の安全性には厳しいと同時に、信頼もする。大手メーカーはその信頼に応える。そこで、地域の惣菜店などに並ぶ食品より、安全でおいしい加工食品が選ばれ、それが食品工業の大規模化と効率化を促す。それが他の産業にも波及し、市場稀に見る経済・産業大国を誕生させたと言えるだろう。
同じ地域社会に育ち、同じ郷土食を食べて育った者同士に連帯感が育つように、アメリカ人にとっては、大手メーカーの製品を食べること自体が、国民のアイデンティティなのかもしれない。