メリー・クリスマス!
歴史上、多くの軍事作戦がクリスマスまでの戦争終結を目指して実施され、思惑通りにはならなかった。ウクライナにせよイスラエルにせよ、クリスマスの声を聞くと、また今年も終わらなかったと思ってしまう。
ネット時代は、今起こっている戦争の、その日の兵士や兵器の損失数、前線の移動距離などが毎日公開される。それを見ていると、片方が「何キロメートル前進した」と発表した同じ状況を、他方は「何キロ誘い込んで、これだけの損害を与えた」と発表しているように見えてくる。孫子が言う通り戦争とは騙し合いなので、発表されたものがそのまま事実とはいかない。が、両方ともウソをついているわけではなく、作戦通りに成果をあげたと考えているのだとすれば、これは長引くわけだと思う。
メディアは、戦況が一進一退だという。まるでプラマイゼロのような言い方だが、実際には毎日千人単位の戦死者が出ていて、国はその分確実にダメージを被っている。そんな判断のつけづらい戦況データを見て、優位か劣勢か見極められるのは軍人だけだ。講和を決定するのは国民と指導者だが、今のままでどうなるか見通しを述べるのは軍人の仕事だ。だが、戦況が混迷した時に限って、生粋の軍人を要職から外して政治寄りの人物をすえてしまう。これもまた戦争の歴史で、何度も繰り返されてきたことだ。
「勝敗にかかわらず、戦争でペイした国はない」と言ったのは、確か軍事研究家のリデル・ハートだったと思う。一進一退と言われる境界線の前後の何キロにも及ぶ地帯は、建物も立木も焼き払われ、壊れた車両や兵器から流れ出した毒物と不発弾、染み込んだ血液と放置された腐敗物で、誰が手に入れたとしても使い道がない。

