2009年公開のアメリカ映画。主演、監督、製作、音楽、クリント・イーストウッド。
イーストウッド監督作品の中でも評価の高い作品だけに、心身ともに万全のコンディションで見始めたが、期待は裏切られなかった。例によって大物スターは自分だけ、大掛かりなセットも特撮もなしの
今では日本車がはびこるデトロイト市の郊外に一人住まいするコワルスキーは、朝鮮戦争から帰国後にフォードの組み立て工をしていたという、古いアメリカ人。人種、性別、異世代への差別意識や偏見に凝り固まり、家族とも疎遠になってしまった偏屈な老人だが、隣に越してきた東南アジアの少数民族の大家族との交流から物語は動き出す。
例によって小さなエピソードを違和感なく積み重ね、観客を心あたたまる時間から、不吉なクライマックスへと引っ張ってゆく。
公開時ですでにイーストウッドも高齢だっただけに、老人の描き方に身につまされたり、考えさせられることも多い。自分も最近は年取ったと感じることが多かったが、まだまだ歳の取り方が足りなかったようだ。70歳をたっぷり超えたら、もう一度観てみよう。
マカロニウエスタンではニヒルなガンマン、ダーティハリーでは超型破り刑事、90歳の運び屋ではとぼけたチョイ悪爺さん、どれも彼ならではの味がありますね。
マカロニやハリーのつもりで、初の監督作品「恐怖のメロディ」を観たときはショックでした。ストーカーという言葉がなかった時代に、病的なつきまといを描いたものですが、そういう鬱々とした映画も上手です。お陰でしばらく名曲ミスティがかかると、妙な気分になりました。
クリント・イーストウッドは大好きな俳優(監督)です。往年は監督作品も多く、しかも自分自身の年齢をそのまま生かしたシナリオと演技は真に迫るものが有ります。どんな綺麗な顔立ちの俳優よりも、あのシワクチャな表情こそが彼の役者としての一番良い表情だと思います。
ローハイドは断片的に覚えていますが、一番よく観たのはやはり、マカロニ・ウェスタンやダーティ・ハリーです。本人が長寿で現役を続けているからか、過去の作品も色あせて見えません。年の功、年齢の蓄積もあると思います。グラン・トリノでも、観客が「ハリーならぶっぱなすだろう」と思うような場面をうまく組み込んでオチにしてました。そんな風に監督の思惑通りに映画を楽しめるのも、過去のイーストウッド作品を観てきた年の功かもしれません。