amazonの実店舗、amazon flesh に設置されたレジなし清算システムが、実は1000人以上の手作業で処理されていたそうだ。一見自動化されているように見えるが、実は手作業というシステムは、何も珍しいことではない。例えば各種の申し込みフォーマットなど、文字を入力し何箇所かチェックを入れて送信したものが、相手はメールとして受取っていて手作業で登録するのは普通のことだ。自動化されていると明言しているわけでもないし、そういうデータが直接データベースに取り込まれるのはむしろ危険だ。人間が途中で目を通すから正確に作業が進んでいる、という場合も多い。
面白いことに、IT化や自動化はクールで人間が関与するのは時代遅れというイメージが、21世紀になってもまだ一般社会の中に根強いらしい。amazon fleshの清算作業はインドで行われていたらしく、今は撤去されたというが、消費者にとってはレジ待ちがなくなるメリットに変わりはないのだからやめる必要はないだろう。また、インドではIT関連業種はどの職業カーストにもあてはまらないので、下位カースト層の重要なキャリアアップ手段になっている。時代遅れどころか、現代だからできる、これといって問題のないやり方だ。
さらにいえば、とりあえず手作業で清算業務をこなし、その間に現場トラブルなどのケーススタディを積み重ねていき、徐々に本物の自動化に置き換えていくというのは非常に合理的だ。そしてうまくいけば、ライバルを「今のところamazonにさえ不可能なシステムへの挑戦」へと、ミスリードさせることができるかもしれない。人海戦術でコストは上昇するかもしれないが、それこそ他社の参入障壁になる。そういうのを戦略的な資源投下というのではないだろうか。
ちなみに日本でも、例えば各種申し込みフォーム画面などでチェックボックスを切り替えても、実際の変更はそれを見た担当者が手動で行っているというような例は少なくない。本当なら最も合理化が進んでいるはずのIT業界で、締切の逼迫や残業が常態化しているというのも、そのへんが理由かもしれない。もっとも、それが戦略的だとは思えないが。


