After Hours

Avery Parrish(1917, 1959)によるブルース曲。

サムネールでお気づきだろうが、演奏はクリント・イーストウッドだ。After Hoursは前半だけだが、堂に入った演奏っぷりである。現在90歳のはずだから、動画のときもすでに80代だろう。
クリント・イーストウッドといえば、マカロニ・ウェスタンやダーティ・ハリーでスターダムにのし上がったが、ジャズと縁も深い。監督第一作の「恐怖のメロディ(原題「ミスティを私に)」は、エロール・ガーナーの名演奏をモチーフにしたサスペンス映画で、その後もいくつもの映画のシーンにジャズを取り入れている。「バード」はチャーリー・パーカーを描いた作品だ。
なお、流石に肖像権がうるさいのか、紹介しようとしていた別の動画は視聴不能になってしまった。これも危ないので、消えていたら検索し直してほしい。

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Giant Steps

John Coltrane(1926 – 1967)の曲。

なぜサムネールに子供が,、と思ったかもしれないが、実際に子供なのだ。ジョーイ・アレキサンダー(2003年生まれ!)の、5年前(!!)だから11歳(!!!)の演奏である。

演奏は自由自在で長めのイントロから始まる。コルトレーンはどこに行ったかと思う頃に、ベース、ドラムとともにおなじみのテーマが始まる。もともとがどこに連れて行かれるかわからないようなややこしいコード進行で、うかつに手を出せないような曲だが、自分なりにしっかり消化し、さらに本家へのリスペクトも十分感じられる。堂々たる練達ぶりだ。

ジョーイ・アレキサンダーは、インドネシア バリ島生まれで、父親のジャズ・アルバムを聞きながら独学でピアノを身につけたという。
楽器は体格にも左右されるので、どんなに指が動いても、小柄だとなかなか音圧が出ないのだが、力負けした音がない。体は子供だが指がかなり長い。大人の私より長いのではないだろうか。
他の動画では、コルトレーンだけでなくソニー・ロリンズやビル・エバンスなど、普通のプレイヤーなら気後れしそうなジャズの巨人の十八番を、次々自分のものにしている。詩情あふれるソロがあるかとおもえば、ソウルフルなゴスペルもあるというように、音楽的な引き出しの多さも感じさせる。さらにオリジナルもあるそうだ。もしかしたらあまりに若いので、音楽のジャンル分けや、古い新しいなどにおかまいなく、あるがままに良いと思ったものを受け入れているのかもしれない。

若い頃にジャズを聞いたときは、コルトレーンなどの巨人たちが、ジャズを行き着くところまで高めてしまって、後は衰退しかないんじゃないかと思ったが、長生きはするものである。こうして、巨人の偉業を踏み台にしていく才能が現れるのだ。とはいえ、11歳というのはどうにも信じがたく、これは全部CGと合成音楽でしたと言われたほうが納得がいくくらいだが。

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What a Friend We Have in Jesus

チャールズ・コンヴァース(1832-1918 米)による賛美歌。作曲家ではなく、アマチュアだそうだ。

非常に聞いたことのあるメロディである。邦題の「いつくしみ深き」というのは知らないが、他にもいくつか違う歌詞がつけられていて、「星の世界」というのが音楽の教科書にあったバージョンだったと思う。

youtubeにはいろいろな演奏が公開されていて、この古い曲が、今でも多くの演奏家に愛されているのがわかる。その中から特に良かったのがこの人。テンガロンハットにズボン吊り、カフスがたくさんついたシャツ、怒ってるわけではないがちょっと怖い表情。フィドルも弾くが、舐めた口を利く若造にはライフルを突きつけることも...。そんな雰囲気いっぱいの、完璧なアメリカのご老人である。伴奏をしているのは奥さんかもしれない。調律がちょっと外れて、ホンキイトンクな音のピアノがよく合ってる。難しい曲ではなく、高度なテクニックも使わないが、年の功の存在感で聞かせる。こういうのが私の理想だ。

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