ビブラート

バイオリンを買った時、なるべく毎日練習しようと決心した。とは言えどうにもならない日もあるので、鳴らさなくてもせめてケースから取り出して構えるだけ、それもできなくても1日1回、ケースの蓋だけでも開けようと決めた。これはなかなか良いアイデアだったと思う。最初はどうせ音を出しても出さなくても大差はない。ケースから出して構えるだけだと、ほんの1分かそこらの時間ですむし、触った回数の分だけ取扱いに慣れることができたように思う。

いろいろなことに慣れてきたが、ビブラートだけは骨が折れた。最近ようやく、押さえる指によってはビブラートをかけられるようになった。が、最初は他人の手のようなもので、動け、振動しろと命じても、ピクりとも動かなった。楽器をもたずに手首をブラブラ振るのは難なくできる。でも指先が弦を押さえてしまうと、同じことができなくなるのだ。そこで、いつかはなめらかな振動になることを信じて、ガックン、ガックンとごくゆっくり手首を動かしていたのだが、意識を集中しないとすぐ動きが止まった。そして手首の振動に気を取られると、弓を動かす右腕が止まるのだ。
また、ビブラートを続けると、手首が痛くなる。続けると言っても1・2分だが。きっと関節の油が足りないのだろう。さらに指が少しずつズレて、音程がズレてくるのも問題だ。私の場合はだんだん音程が高くなる。普通に押さえてる時なら、ちょっと指をズラして音程を戻してしまうのだが、ビブラート中にそんな器用なことはできない。かれこれ1年近く練習したが、できてる部分も、なぜできてるのかコツや要領がよくわからない。おぼろげながらわかったことは、思ったより力を込めて指を押さえつけなくても良いのかもしれない、ということだ。
プロのバイオリニストは、当然ながらビブラートがうまい。昔はちょっとかけ過ぎで、曲によっては豪華絢爛になりすぎると思っていたが、今はそういうのを見ると「恐れ入りました」と平伏したくなる。

ところで、弦を押さえる左指だけ爪の伸びが早くなったような気がする。最近は年をとって代謝が下がり、爪の伸びがだんだん遅くなってきていたのだが。左指先だけ刺激するからかもしれない。

弦の張替え

バイオリンの弦を張り替えた。なんとなく音が冴えなくなったような気がしていたが、音程は安定していたので、ずっとそのままにしていた。が、検索すると3カ月で張り替えるものだという。そこで、さっそく張り替えることにした。

張り替えるにあたって、いくつか注意した点は、ブリッジを倒さないこと。苦心して立てたブリッジなので、位置を動かさないよう、1本づつ張り替えていこうと思ったが、妙なところで力が入ったせいで一度倒してしまった。調整のし直しである。買った直後にさんざんいじったので慌てはしなかったが。

新しい弦を徐々に巻き上げていくのは、けっこう怖い。正しい音程に近づくにつれて、こんなに強く張ったかなと心配になった。一応全部の調弦を終えたが、なじむまで落ち着かない感じだ。すんなりと大きな音が出るようになった弦もあるが、上滑りするようになった弦もある。
また、惰性で弾いていたので気が付かなかったが、気持も新たに弾いてみると、右から1.2.3の弦の高さに差がなく、2番目(Aの音)の弦を弾くときに他の弦を触りやすいことに気がついた。そういうふうにブリッジを削ってしまっていたのである。カントリーなどでチャカチャカ速弾きをする人は、あまり肘を上げなくても隣の弦に移りやすいので、そんなふうに調整する人もいるらしいが、1音ずつ性格に出さなければならない初心者には不利かもしれない。そのうち削り直すかもしれない。

張り替えると音はそれなりに明瞭になった。かすれるような音も、弦にロージンがよくついてなかったせいらしく、そのうち普通に音が出るようになった。同時に楽器自体の限界だろうけど、バイオリンというよりハーモニカかアコーディオンのような音色になった。が、さしあたりこれなら十分である。あたりまえのことだが、弦は時々はりかえたほうがいい。

弓の使い方

バイオリンを始めた頃に知っていたかったと思うことが、いくつかある。特に弓を使う楽器は始めてだったので、その動かし方にはなかなか苦労させられた。

例えばバイオリンは、ギターのようにポンとはじけば余韻が続く楽器ではなく、それぞれの音符の長さの分だけ弓を動かし続けなければならない。ゆったりと流れるような演奏がバイオリンの魅力だが、そのためには一つの音をたっぷりと弾き、次の音の直前に急いで指や弦をかえなければならない。このときにドタバタやるので雑音が出たり、他の弦も一緒に弾いてしまう。
また、原則的にひとつの音から次の音に移る時に、弓を逆に動かす。そこで下記のようなメロディが続くと、片方にばかり弓を動かずので、弾く位置がズレていってしまう。何か単純な勘違いをしているのかもしれないが。

また、弦と弓は一定の位置、一定の角度を保ったまま接していなければならない。弓を倒してもいけない。弦の上に真っ直ぐなレールが敷いてあって、その上を弓が行き来するように動かさなければならない。
が、関節を曲げると腕や手は弧を描いてしまうので、手首の角度などで調整し、とにかく弓の位置や角度を一定にするのだが、これがなれないと難しい。理屈でわかっても、そんな動きをしたことがないのだ。

また、弓の張り具合もわかりにくい。あまり強く張ると弦の上でポンポン跳ねるので、棒がまがったままの、ゆるい状態に張ったほうが良いようだ。演奏動画を見ても、けっこうゆるく張ってる人が多いように思う。

弓ではないが、弱音器は意味がなかった。ブリッジにしっかり据え付けなければならないので、ついブリッジの位置が動いてしまう上、そもそも他人に迷惑になるくらいの大きな音が出せるようになるのが、最初の課題なのである。

下手くその弾くバイオリンというと、ノコギリでも引くようなギコギコ音を想像しがちだが、ただ音を出すだけなら、そう難しくはない。が、たえず弓を動かしながら、これらのポイントにまんべんなく注意を配るのは大変だ。リズムや音程に注意がいくと、弓への注意がおろそかになり、おかしな位置で弾くことになって雑音を出してしまうのだ。これらは教室に通えばすぐ教わることかもしれない。が、自分の性格上、一度懲りて身にしみてからでない身につかない。試行錯誤しながら、何かに気づくというのはなかなか楽しい経験ではある。