スパゲティ”なんでも”暗殺者風

先日あるサイトで、スパゲティを茹でるときに、一緒の鍋でレトルトを温めるのは是か非か、という記事があった。なるほど、コンロに茹で用とレトルト用を並べて火にかけるのは、無駄をしているような気がする。不衛生な気もしたが、たいてい箱に入ってるし、気になるならパックを水洗いすればいい。多分一人暮らしの若い人の記事なのだろうが、私も一人暮らしだったらやってただろうと思う。

そこで思いついたのが、先日紹介したスパゲティ・アサシーナ(暗殺者風)方式。レトルトの中身を鍋に開け、茹でる前のスパゲティを入れて水を足しながら煮込むのである。試してみたところ、なんなく成功した。カレーで試したときはでんぷん質が多くて焦げ付きやすかったが、問題なく成功。むしろコゲ風味が良い風味を出していた。
さらにペペロンチーノも試した。鍋にオリーブオイルとニンニク、鷹の爪、アンチョビを温めたところへ、乾燥スパゲティを入れ水を足す。ソースさえない、究極の暗殺者風。いわばゴルゴだが、これも問題なし。オーソドックスなレシピとどこが違うかわからないほどだった。

ところでナポリタンは日本独自のスパゲティのように言われるが、私はケチャップとはいえ鍋でソースと合えるナポリタンより、茹であげにソースを乗せるだけの「ミートソース」こそ、本場からかけ離れたスタイルだと思っている。そんな偏見のせいか、これまでカレーのレトルトは満足できても、ミートソースのレトルトは、パック臭さのようなものを感じてあまり美味しいと思ったことがなかった。
だが、そんなレトルトのミートソースを暗殺者風にしたところ、見違えるようになった。それまで気づけなかったメーカーの工夫や努力が余すところなく発揮され、「ひと皿」として成り立ってるのではないかと思えたほどだ。このやり方は暗殺者風だけに、スパゲティのキラーメソッドになるかもしれない。

自家製「安全〆鯖」

〆鯖をつくってみた。以前はちょっと遠くのおいしい〆鯖を作る魚屋さんまで買いに行ってたが、いつのまにか廃業していた。それもけっこう昔の話だが、その間なんとか自分で作れないかと考えてはいた。だが、「生き腐れ」と言われるほど足が早く、鮮度の良い生はアニサキスが気になる。前門の鮮度、後門のアニサキスで、なかなか手が出せなかった。

ある日、冷凍のフィレブロックなら鮮度もまずまずで、何よりアニサキスがいないのではないかと気がついた。検索すると大体間違いではなく、そもそもスーパーなどの〆鯖は、冷凍もので作ってるともいう。見つけたレシピ通り冷凍のまま酢とともに冷凍バッグに入れて一晩おいたところ、それらしいものができた。味はその昔のとれたてを酢にくくらせた程度で仕上げたものに比べれば、劣るとはいうものの、まあまあである。

サバは日本中で取れるが、産地によって体型がだいぶ違う。西日本では小ぶりで前から見ると木の葉型で、脂もきつくなく、〆鯖もさっぱりと仕上げる。北海道はエサが多いので魚体も大きく、前から見ると完全な円形に見えるほど脂がたっぷり乗っている。そこで〆鯖も脂に負けないややきつい酢で仕上げ、脂のコクを味わう。
どちらの流儀が良いかといえば、どっちもどっち。それぞれの産地から一番近いものを使ったやり方が、いちばんうまい。冷凍サバはノルウェーあたりの脂の乗ったタイプなので、北海道産に近く、おなじみな感じだ。ちなみに少々醍醐味にかけても安全をとる、ということで「安全〆鯖」と名付けた。某大学の学校祭名物、「衛生おでん」のマネである。

スパゲティ・アサシーナ(暗殺者のスパゲティ)

最近見かけるようになった、ちょっと変わった作り方のスパゲティ。イタリアの動画でいくつか紹介されており、今年に入ってからアップしたものが多いので、新しい技法なのかもしれない。「暗殺者風」という名前さながらに乱暴な作り方のようも思うが、米の代わりにスパゲティを使っただけで、リゾットの作り方と同じだから、珍メニューというほどではないのだろう。焦げを味わうというのも、パエリャのようだ。

試してみたが、悪くなかった。ポモドーロ(トマトソース)とも違って、コッテリしていながらヘルシーな素材ばかりなので、私のように年甲斐もなく口だけいやしい高齢者にはぴったりだ。スパゲティがソースに浸かってない部分があっても、最後にはちゃんと柔らかく仕上がる。むしろ気にして絶えずかき回していると、せっかくのコゲができない。今回使ったのは1.6ミリのスパゲティだが、ソースの濃さに合うもっと太いものでも問題なさそうだ。
他のレシピでも、最初のソースがトマトのピューレで、トマトペーストを溶いた水を足しながら茹でていたが、これは400gのトマトホール缶1個の実のほうをソースに、ジュース部分に水を足したものでスパゲティ2人前(200g)でも問題なかった。ただしトマト缶は安いものは酸味が強いので、(其れが悪いとは思わないけど)好みで選んだほうがいいかもしれない。

問題は鍋である。動画では良いコゲのできやすい鉄のフライパンを浸かっていたが、トマトのような酸のあるソースを煮詰めると、せっかく表面にできた四酸化三鉄(黒錆)のコーティングが溶けて、銀ピカになってしまうこともある。とはいえこれは偏見だが、テフロンだと煮えたようになって良い焦げ目ができにくい。ホーロー引きの鋳物鍋があれば一番いいだろう。
鍋のサイズも問題で、スパゲティの全長が入るものはないかもしれない。私もやむなく2ツ折にしたが、これはイタリア人にとって、日本人が畳の上を靴で歩いてるのを見るのと同じくらい不快なものだそうだから、周囲にイタリア人がいないことを確かめてからやった。

アサシーナ(暗殺者風)という名前がすごい。血まみれのような見た目からだろうか。「アサシン」は中東の伝説の暗殺者集団が語源だそうで、「仕事」に赴くときに大麻を吸ったことから、ハシシュも同じ語源だ。この他にもパスタ料理にはディアボロ(悪魔風)、ブッタネスカ(娼婦風)など、なぜか罰当たりな感じの名前が多い。聖者や聖職者というような、まっとうな名前はないのかと思ったら、Strozzapreti(ストロッツァプレティ/司祭の暗殺者)という名前のショートパスタがあった。そういう国民性なのだろうか。