私の練習曲/ボサ・ノバ伴奏動画

ブルースはどれもだいたいコード進行が同じで、リズムや伴奏によってジャズだったりロックになったりする。それと同じように、特定の曲ではないのにいかにもボサ・ノバらしく聞こえるコード進行と伴奏の動画があった。ブルースの伴奏動画と同様、テーマがないから最初からアド・リブをするしかないのだが、適当に音を出してもそれらしく聞こえるという点では、ブルースよりやりやすくて非常に楽しい。

楽器を練習をする目的は、つまりところ格好いい演奏をしたいということに尽きるだろうが、ポピュラー音楽をめざすなら小学校唱歌的なお行儀の良い和音ではなく、ちょっと外したような音を出してみたいと思うはずだ。この動画の場合は、適当に出した音でも、不思議とボサ・ノバのフィーリングをつけてくれる。また、あまりたくさん音を出さず、2分音符や全音符などの長い音を出しているだけで様になる。もともとテンポはゆっくりだし、ボサ・ノバ自体が力の抜けた曲調なので、テンポを気にせずのんびり音を出していればいい。我々未熟者のためにあるような伴奏だ。プロの演奏はどうしてもテクニックも見せつけなければならないので、早くて音の多いフレーズも弾いてみせなければならないが、アマチュアはそんな必要はない。

私の練習曲/Fly Me to the Moon

楽器の上達具合は、選んだ練習曲によってかなり違うように思える。効果的な練習曲選びのポイントは、まず、自分の好きな曲かどうかだろう。好きなプレイヤーの好きな曲は、メロディや装飾音まで頭に入っているので、楽譜に釘付けにならずにすむ。また、難易度というのは案外分かりづらいもので、楽譜がそれほど音符で混み合ってなくても、妙に雰囲気がつかみづらかったり、指使いがアクロバットなものもある。逆に言うと、好きな曲なら多少ややこしそうでも、チャレンジしてみる価値がある。
動画サイトなどで、良いお手本演奏や伴奏を見つけることも大事だ。こういう動画には、バラードかボサノバかといった曲のスタイルや、速さ、コードなどさまざまな情報が詰め込まれているので、例えば伴奏動を流しながら、楽器を持たずに鼻歌だけ歌っていても練習になってしまう。

私が最近手掛けてみて、良かったのが「Fly Me to the Moon」だ。練習に使ってる伴奏動画はこれ。

この曲の何が良いかといって、メロディラインが「ドシラソファソラド、シラソファミ…」と、まるで音階練習のような並びなので、次に弾く音の指使いで混乱しにくい。譜面で見たり、演奏を聞いた印象より、ずっと弾きやすい曲だ。
だからといって決して単調で退屈ではなく、モダンで洒落た感じの名曲だ。多くのプレイヤーに演奏されているので、お手本にもことかかない。スタイルもしっとりしたバラード調からボサノバまで揃っていてさまざま。伴奏動画はCとBフラットがあるので、管楽器でもそれ以外の楽器でも、すぐ適当なものが見つかるだろう。もちろん練習用としてだけでなく、上達すれば十八番(おはこ)として人に聞かせるにも、なかなかナイスな選曲だ。
ちなみに、この曲が誕生したときは「In Other words」というタイトルがついていて、3/4拍子だった。現在のタイトルと形になってからは、フランク・シナトラが歌ってヒットさせ、アポロ宇宙船の中でも流れていたそうだ。それから50年後の今年、人類をふたたび月面に送るアルテミス計画が進行中で、今回は日本も参加している。この曲がまた宇宙船で流れるのかもしれない。

きらきら星

バイオリン初心者の練習曲といえば、「きらきら星」と相場が決まってるらしい。いかにも童謡っぽくて、いい年をした大人が魂を傾けて弾くものではないような気がする。こういう選曲では、その後の上達にも影響があるのではないかと思うのだが。
だが、原曲は19世紀のフランスのシャンソンらしいが、オリジナルの歌詞はこんなぐあいだ。擦れっ枯らした大人から見ても、なかなか趣深い。とは言え弾く気にはならないが。

ねえ! 言わせてお母さん 何で私が悩んでいるのかを
優しい目をしたシルヴァンドル そんな彼と出会ってから
私の心はいつもこう言うの

「みんな好きな人なしに生きられるのかな?」

あの日、木立の中で 彼は花束を作ってくれた
花束で私の仕事の杖を飾ってくれた こんなこと言ったの「きれいな金髪だね
君はどんな花よりきれいだよ 僕はどんな恋人より優しいよ」

私は真っ赤になった、悔しいけど ため息ひとつで私の気持ちはばれちゃった
抜け目のないつれなさが 私の弱みに付け込んだの
ああ! お母さん、私踏み外しちゃった
彼の腕に飛び込んじゃった

それまで私の支えは 仕事の杖と犬だけだったのに
恋が私をだめにしようと 犬も杖もどこかにやった
ねえ! 恋が心をくすぐると こんなに甘い気持ちがするんだね!