ブルースハープ

畏兄「昔の少年」氏はいつも忙しい.多趣味で,音楽でも車でも,いろいろなジャンルに詳しいが,特に昔やっていたトランペットをまた始めたいのに,その時間がとれないでいる.そこでせめてものなぐさめにブルース・ハープをおすすめした.

ブルースハープとはブルース・ハーモニカのことで,手の中にすっぽり収まるほど小さく,穴も10箇所しかない.同じ穴を吹く時と吸う時で音程が変わり,半音が出ないかわりに,隣り合った穴を2つ3つ同時に鳴らすと和音になる.半音が出ないので,曲の調に合わせて,全12種類のハーモニカがある.

そのなかで例えば「C」のハーモニカは,いわゆる「ドレミファソラシド」の音しか出ない.これだけなら童謡みたいな曲しかできないが,これを「ラ」の音から,「ラシドレミファソラ」と吹くと,Aから始まる短調(Am)のスケールになり,「G」から始めるとGの長調(GM)のブルース・スケールになる.それに加えて,音の出口を手で覆ったり開いたり,喉をすぼめて息の出入りを絞ったりすると,音程が微妙に変わりブルース独特の渋い音色になる.

氏にはGのブルースハープをおすすめし,バイオリンと相性のいい,DのブルースやEmの曲で合奏しようと持ちかけた.氏からは,いっそ「ストリート・ミュー爺チャン」をやろうと言われている.

次回「楽器と調」(5/14)公開予定
乞うご期待!

カテゴリー「Bluesへの道」

バイオリンと戦略

戦略と戦術はどう違うのか.というテーマが,経営者仲間や得意先とときどき話題になる.「戦略上の失敗は,戦術的な努力では補えない」とか,「戦略的に負けた側は,なぜ負けたかも理解できないうちに負ける」などと言われるほど重要なものだが,人によって定義は違うらしいし,戦略らしい戦略を持ってる会社は少ないものらしい.私は,意見を求められた時には,こう答えてきた.

ある町にコックさんが二人,近くに同時に洋食店を開いた.どちらもメニューやサービスに工夫をこらして頑張るのだが,さらにA店は,開店と同時にバイオリンの練習を始めた.3年後A店は店主が店頭でバイオリンを弾いて客引きし,カップルや誕生日にはテーブルで演奏したので,そのことが話題になって客足が増えた.これを見てB店がバイオリンをはじめても3年間の差は追いつかないし,やっても二番煎じにしか見られない.プロを頼めばA店と同じ程度に持ち直すかもしれないが,コストが経営の負担になる.

コックさんとバイオリンという,できるだけかけ離れたものを例にして,どんな小さなビジネスにも戦略はあり,他の上手くいってる手法を真似すると,たいてい誰かの思う壺になることを言いたかったのだが,何回か話しているうちに,実際にやってみたくなったというわけである.

ちなみにバイオリンを弾くコックさんというのは,ディズニー映画「わんわん物語」の中の,「ベラノッテ」の名シーンからとったつもりだったが,動画を探すとアコーディオンとマンドリンだった.何かしゃべる前にググれと,若い人に言われるかもしれない.

次回「リズムとズレ」(4/25)公開予定
乞うご期待

さらばテレビ

私はテレビとともに育った世代である.2011年の地デジ移行の際には,いろいろな思い出とともに,ぜひ最期の画面とアナウンスを体験しようと思っていた.そして,停波したらしばらくテレビのない暮らしを味わった後に,ゆっくり買い換えようと考えていた.だが放送は止まらなかった.実はマンションごとケーブルテレビが入っていたため,停波の前から,業者がデジタル信号をアナログに変換して送ってきていたのである.

これには拍子抜けするとともに,いろいろおかしな点も見えてきた.まず,都市部ではビルだけでなく,ビルによって電波が届かなくなる可能性のある周囲の住宅も,たいていケーブル配信されている.遠隔地の集落などはともかく,人口密集地の多くの家庭では,テレビを買い換える必要はなかったのだが,そういうアナウンスはなかった.
地デジ移行とタイミングを同じくしてエコポイント制度が導入された.この制度自体は地デジテレビの普及が目的だから悪いことではないのだが,テレビの価格はエコポイントのメリットを遥かにしのぐほど高騰した.行政,業界がタッグを組んだキャンペーンなのだが,昭和時代じゃあるまいし,いまさらテレビ頼りかと思うと,その芸の無さにぶりに白けてきた.案の定国内のテレビメーカーは一気に衰退し,部門閉鎖や身売りの話が続出するようになった.魅力的な商品を開発できず,お上に頼ったのだから当然かも知れないが.

そんなわけで,アナログ停波の感慨もないまま,ブラウン管テレビでダラダラ視聴を続け,2015年に,ついにケーブル業者のデジアナ変換サービスも終了することになった.その間,テレビが壊れたら買い換えるつもりだったが,因果と古い機械は壊れにくい.そして最期の砦,難関と言われるNHKの契約解除がもめたら,あきらめてテレビを買い換えようと思ったが,これもすんなり受け付けられた.

テレビを見る時間とお金で,バイオリンを演奏する.その生活の変化は,驚くほどだ.ネットではテレビ番組が面白くないとか,ジャーナリズムとしての姿勢がどうとか,盛んに批判されているが,そういう意見を持つ人はテレビを見ている人だ.一介のバイオリニストには,テレビに対する不満など一切ない.むしろ,再び買わざるを得ないほど面白い番組を作ってほしいものだと,期待している.

次回「バイオリンと戦略」(4/22公開予定)
乞うご期待