タイトル画像の話 / シュトローバイオリン

以前にも一度記事にしたが、私はシュトローバイオリンという風変わりな楽器を持っていて、タイトル画像のモチーフにしたこともある。

撮影場所は、明治期の建物を多数保存公開している北海道開拓の村。夏の明るい日差しと照明のない室内の暗さが、時代の隔たりを表しているようだ。どの建物か忘れてしまったが、他の見学客が入ってこないのを良いことに場所を拝借して写した。若い人のブログで、お気に入りのキャラクター人形を旅行先に持って行って、名所の背景に入れ込んで撮影していたのを見てやってみたくなったのである。「ぷぅと鳴り」と書いたが、実際バイオリンの澄んだ音色というより、チャルメラや蓄音機そのままの音が出る。こういうレトロな雰囲気にぴったりなのだ。その時は鳴らす度胸まではなかったが、羞恥心が老化した今ならその場で一曲弾いていたところだ。

というか、今度本当にやってしまおうかな。施設案内を調べてみたら、コスプレについては公序良俗に反しない、長時間専有しないなどの注意書きがあったが、楽器演奏に関する規則はないようだ。かなり広い屋外施設な上、いつも空いてるようなので、常識範囲ならOKのような気がする。日本の役人は紳士&淑女なので、いきなりオイコラ!やつまみ出しはしないはずだ。いざとなったら少しボケてるふりをして、優しくしてもらおう。「前もって説明するより、やった後で謝るほうが簡単」というのが私のモットー(※)でもあることだし。

(※)もっと穏当なモットーもたくさんあります。

STROH VIOLINの鳴るしくみ

(同じ記事を2回出してしまった。予約投稿を間違ってしまったらしい。取り替えるのも変なので、本来の今日の分を追加した。)

STROH VIOLINと普通のバイオリンとは、その外観だけでなく、音が鳴るしくみがかなり違う。一般のバイオリンのブリッジは胴の上に直接乗っていて、弦の振動を胴に伝えて、内部の空間で共鳴させている。STROH VIOLINのブリッジは金具(A)の上に置かれている。金具の端には木の棒(B)がついていて、薄い円筒型の箱(D)の中の金属の薄板(C)を振動させる。ここまで伝わった音は、ラッパ管(E)で増幅される。

このブリッジ部分の代わりに、レコードと針を置けば、ゼンマイ式の蓄音機のしくみと同じになるはずだ。

STROH VIOLINの音色は、昔の蓄音機そのものである。哀愁を帯びた金属的な音で、低音がカットされたような平坦な音なので、美しいとは言えないが味わいがある。ラッパの口が向こうへ向いてしまってるので、音量がどれくらいかわかりにくいが、それほどけたたましいものではない。

バイオリンにラッパをつけて音を増幅する楽器はSTROH VIOLIN以外にも何種類かあって、ほぼバイオリンの原型のまま、胴の一部からラッパを出して音を増幅するものもある。いずれにせよバイオリンの音量を大きくしたいというところから生まれた工夫だ。一説によれば天下の名器と言われるバイオリンの条件は、音色の良さもさることながら、第一に音量が大きいことらしい。名高い名工たちはバイオリンの素材や仕上げの精密さで音量の問題を工夫したが、蓄音機が発明されたことで、その原理を応用したのがSTROHVIOLINということだろう。

STROH VIOLINの構造

STROH VIOLINは重さが2キロもある。金属のラッパがついてるのだから当然だが、普通のバイオリンが500グラムほどだから、同じようにあごに挟んだだけで手放しで支えることはできない。買う前にそこが心配だったが、持ってみるとラッパが二の腕に乗っかる感じで、やや重さが軽減される感じがする。まっとうなプレイヤーなら、そこが邪魔だと感じるのかもしれないが、本体が重くてフラフラ動かないので、運指が安定するような気がする。もちろん、高低差の大きいポジションを素早く行き来するような曲は難しいだろう。

STROH VIOLINのヘッド部の巻き上げはギヤである。木のペグに取り替えることも、ヘッド部分に穴を開け直せばできるかもしれない。ただし、この部分を普通のバイオリン用の既製品ととりかえてしまうのは無理なようだ。STROH VIOLINは胴の代わりに木の棒が本体になっていて、一体構造だ。材質も家具などにつかうような堅牢そうなもので作っている。ネット上では、普通のバイオリン用のネックや指板までパーツ売りしてるので、これらがそのまま使えたら面白かったのだが。