その昔、工業デザインや広告デザインの分野で、しきりにシンプル・イズ・ベストということが言われた時代があった。過剰な装飾や凝った意匠は前時代的であり田舎臭く垢抜けていない。それに対して機能性だけから生まれたデザインは、理知的で都会的である、とされた。それ自体バウハウスなどの考え方を受け継ぐ根拠のある考え方で、形状もカラーも一切の装飾性を削り取ったアップル社製品などが、その真骨頂である。
だがシンプル・イズ・ベストは、多分に企業側の都合によるものでもある。原価や製造時間が圧縮でき、バリエーションも少なくて済む。原材料、部品、製造技術の使い回しもしやすい。また、消費者に本来のシンプルさの価値が理解されているわけでもないようで、やたらと凝ったデスクトップ画像を設置したり、操作の邪魔になるほどストラップをぶら下げ、しまいに動物の耳のついたケースでくるんでしまう。要は多くの人にとってシンプルなことが面白いわけではなく、装飾があったほうが楽しいのである。
そのせいか近年グラフィックやパッケージのデザインで、日本的の伝統的な装飾を盛り込んだ作品が増えてきたように思う。世界的に見ても、各国の伝統的な装飾を現代感覚で蘇らせた作品が注目されている。さしずめ長年の「シンプル・イズ・ベスト」の呪縛から解き放たれたかのようだ。
最近は知的財産の取り扱いには注意を要する。企業ロゴなどはシンプルさを追求すれば、どうしても似てしまうだろうし、AIが加われば今後さらに類似品が氾濫することになるだろう。そんな中で、手間とスキルとアイデアを盛り込んで他と差別化できる装飾性の高いデザインが注目されるのは、無理がないかもしれない。
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