I Have Nothing / アジェリーナ・ジョーダン

以前、ボヘミアン・ラプソディを紹介した記事へのアクセスが増えてきた。検索エンジンにも登場している。うれしい限りではあるが、全世界で1億以上のビューを稼いでいる歌手にしては、日本での紹介が少ないような気もするので、ここでもう一度彼女の「I Have Nothing」をご紹介しよう。

この曲は、1992年のアメリカ映画「ボディガード」の挿入歌で、歌はもちろんホイットニー・ヒューストン。実はアンジェリーナが歌に目覚めたのは、1歳半のときにホイットニーの歌に触れたことがきっかけだそうで、この動画もホイットニーへの捧げ物になっている。また、「ボヘミアン」のときの、原型をとどめないまでのアレンジとは違って、こちらは原曲の歌い方に忠実だが、アンジェリーナのほうが太くて低い声なのが分かる。子供ながらにベテランなみに歌い方が様になっていたのは、この声の低さも理由のひとつだそうだ。

「ボディガード」といえば、例の「エンダァ----」で知られた「I Will Always Love You」が有名だが、あちらが既存のカントリー曲だったのに対し、「I Have Nothing」はこの映画のため、ホィットニーのパフォーマンスを前提に作曲されたもの。当然、誰でもそう簡単に歌えるものではない。
名声も栄誉もすべて手にしたスターが、アカデミーの授賞式で「私には何もない」と歌い上げる皮肉な対比は、映画のテーマそのものである。いくつもの賞を獲得した名曲であるが、「I Will Always Love You」の影に追いやられた感はある。余談だが、飛行場から始まるシークエンスに被せた、「エンダァー・・・」の演出は、ちょっと卑怯だと思う。
もともとスティーブ・マックイーン主演が予定されていたものを、黒人女性と白人男性のロマンスという点がネックになって、なかなか実現しなかった映画だ。当時はまだまだそんな感じで、最初に観たときにも、よくやったなという印象を受けたものだ。良い意味でそのへんのほろ苦さに感受性が希薄になった現代人には、ちょっと物足りないかもしれないが、お気に入りの映画ではある。ただし、「アタシ」はどうかと思うが...。

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