以前から宿題だった「宇宙開発と国際政治/鈴木一人著」を読んだ。我々世代は、宇宙開発の歴史とともに育った世代だが、その歩みを国際政治から見ると違った面が見えてきて面白かった。
ソ連のスプートニク衛星の打ち上げ成功の少し前、米ソは大陸間弾道ミサイルの開発に力を注いでいた。ソ連の科学者チームは、ミサイルを打ち上げても大気圏再突入後にコントロールできず、狙った場所に当てられないという問題を抱えていた。そこで、せめてもの実績づくりとして人工衛星を打ち上げたのだが、アメリカはこれに衝撃を受けた。
国際社会も同様で、ソ連を宇宙時代の盟主と考えた中東やアフリカ諸国が、続々と東側陣営に参加した。宇宙開発が、軍事目的よりはるかに大きな意味を持ってしまったのである。
また、人工衛星の大きな目的のひとつは敵国の監視だが、ソ連は軍人が乗り込んで直接撮影することにこだわった。それがガガーリンの宇宙飛行の意味だったのだが、アメリカはさらなる衝撃を受けた。ソ連は、研究チームの点数稼ぎのための衛星打ち上げがそれほどまでにアメリカに衝撃を与えてしまったことに、逆に衝撃を受けた。アメリカは、当初の軍事目的から離れ、アポロ月面着陸計画を発表しなければならなくなった。
アポロ計画が成功すると、徐々に宇宙開発の予算が削られていき、NASAはアポロをあきらめて、使いまわしできてお得なスペース・シャトル計画を発表した。実際のスペースシャトルのコスパが良かったわけではなかったので、これも中止になり、国際宇宙ステーションを各国と共同利用したり、そこへの往復を他国のロケットに依頼するなど、宇宙開発は低コストな計画だけが残った。
一方、ヨーロッパの宇宙開発は、先行する米ソとは違って最初から国同士の共同事業として始まった。そしてアメリカ等が門外不出にしていた衛星写真を、自前の衛星でどんどん撮っては軍などに販売し、開発費用を稼いだ。そのため、アメリカもこれに追随しなくてはならなくなり、一気に衛星写真が一般的なものになった。
中国の宇宙開発は、銭学森というロケット研究者から始まる。NASAの研究員だったが、レッドパージで迫害され、中国に戻らざるを得なくなった。もともと共産主義者ではなかったが、これを機に打倒アメリカを目指すことになった。その後、独自の宇宙ステーションを打ち上げ、さらに今年1月には月の裏側に着陸するなど、実績を重ねている。
かつて米ソ冷戦時代でも、宇宙関連技術は公開されていたが、中国は非公開であることもあって、中国の威論を叫ぶ声が高まっているが、月面着陸技術自体は、軍事的な脅威につながるものではない。それはそれ、これはこれである。むしろ軍事目的から始まったかつての米ソ宇宙開発競争が、軍事力以上に、国際世界でのリーダーシップ獲得に貢献したことをなぞるものだろう。また、これに対してアメリカも、再び人間を月に送ることを宣言した。宇宙開発競争時代が、また来るかもしれない。動機はさておき、宇宙が賑やかになるのは大賛成だ。