毛が抜けた!

ビオラの弓の毛が抜けるようになってしまった。最近ケースを開くたびに、1本、2本くらい抜けているのは気がついていたが、まとめて数10本くらい、束になって抜けるようになってしまった。抜けると言っても、止めてある両端のどちらかが外れ、長い毛が片方からだらんと垂れ下がるのだから、情けないことはなはだしい。四谷怪談で毒をもられたお岩さんの髪が、ごっそり櫛にかかって抜ける場面のようだ。残った部分も、毛を光に透かしてみると、なんとなく毛の束に密度が減っている。この状態で鳴らしてみると、思ったほど変わってないが、すこしかするようになった気がする。

バイオリンの弓はセットでついてきたもので、素人目にもちゃちだったので、すぐカーボン製に買い替えた。ビオラもセットものだったのだが、まあまあしっかりしているように見えたので、そのまま使ってきた。限度がきたのだろう。
買い換えなければならないわけだが、毛を換えることはできるらしい。動画もあるし、eBayに馬の毛も売っていて、品質にもよるのだろうが、そんなに高いものではない。新しいのを手に入れるのとは別に、そのうち失敗覚悟でやってみるかもしれない。

ちなみに、弓の毛の素材は馬の尻尾の毛、それも雄のものしか使わない。雌のは構造上、おしっこが引っかかってるからだそうだ。

オールマンリバー

オール・ザ・シングス・ユー・アー」や「煙が目にしみる」とおなじ、ジェローム・カーン(1885~1945)が、映画「ショーボート」の劇中歌として作曲した。ジェローム・カーンの曲は、現代でも自然に聞ける名曲ぞろいで、パブリック・ドメイン愛好家にとってはありがたい存在だ。
オールマンリバーは、曲はしってるが、はるか昔に名画劇場で映画を見たくらいの記憶しかなく、それほど馴染みが深いわけではない。プレイヤーの演奏例も少ないのだが、かの昭和の大スター、クレイジー・キャッツの10周年コンサート動画の中にあった。

クレイジー・キャッツは、今日のバラエティ番組の礎を作ったとも言える大スターだ。マンガの手塚治虫、アニメの宮﨑駿とどっこいの貢献度ではないかと思う。動画を見ると、ジャズ・プレイヤーとしても並々ならぬ腕前だったことがわかる。オールマンリバーは動画の10分過ぎたあたり。ハナ肇のドラムソロも聞ける。

バラエティ番組は、こういう実力者が現代とは比べ物にならない不便な環境の中で創り上げてきたものだが、今日のメディアにそのDNAが残っているかどうか...って、TVも見ない人間に言われたくない?

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情報大航海時代

情報大航海時代という言葉がある。インターネットの情報の海に乗り出し、新しい大陸を見つける時代だということらしい。かつて羅針盤の発明により、大海原の向こうまで航海が可能になり、大航海時代が訪れた。新しい航路や大陸が次々に発見され、新しい産物が持ち込まれ、経済も文化も加速した。

が、それは「乗り出した」側からみた歴史で、乗り込まれた側からすれば、そこは新大陸ではなく昔からあった自分たちの土地で、昔ながらの生活があったのだが、珍しくて便利な品物と引き換えに、貴重な産物や資源を二束三文で手放した。挙句の果てに、先祖伝来の土地から追い出され、「居留地」を与えられて「保護」されながら暮らすことになってしまった。当たり前だが、大航海のチャンスは、大船団に投資した者だけのもので、原住民が大航海に乗り出せたわけではなかったのである。

情報大航海時代である現代では、大規模なIT投資を行う企業がある一方、貴重な資源や産物とガラス玉を交換してしまう、原住民の役割の人がいる。そしてそれはどうも、我々自身らしい。

インターネット時代の初期には、ネット上のサービスが今ほど整っておらず、なにもかも自分でしなければならなかった。が、言い換えればそれは、我々自身が大航海に乗り出せた時代だったということだ。が、現代は

  • 便利なサービスを、当初無償または非常に安く提供し、生活に浸透したところで有料化、値上げする。
  • 登録するのはたやすいが、解約する場合は煩雑でまぎらわしくする。
  • 必要のないサービスをインストールさせる。
  • 必要以上に高度な機能を盛り込んだ新バージョンを次々発表し、更新させてその費用を請求する。
  • サービスの利用と引き換えに、個人のサイト閲覧履歴、携帯端末の移動経路等を収集する。
  • 当初優良なサービスだったものが、悪意のある業者等に買収され、迷惑広告などを送るツールになってしまう。

など、我々原住民から時間や個人情報、無駄な費用を掠め取るためのサービスが、大船団となって押し寄せてきている。しかもこれらはまだ上品な交易商人たちだが、海にはハッカーやウィルスという海賊船もうじゃうじゃと増えてきた。
ではどうしたら良いのか。「情報大航海時代」という言葉は、10年ほど前に自分たちも航海に出ようという意味合いで言われていたらしいが、もう小舟が通用する時代ではなくなった。OS、ブラウザ、メーラー、ワープロ、表計算などをすべてオープン・ソースに切り替え、プロキシを通して足跡を消しながら、まるで奥地に引っ込んだ裸族のように、ひっそり生き延びるしかないのかもしれない。