赤い闇 スターリンの冷たい大地で 

1930年代の世界恐慌の最中、ソ連だけが驚異的な経済成長を遂げていることに疑問を感じたジャーナリストが、禁じられたウクライナへの取材を強行。多くの農産物が強制的に徴発され、人為的な飢餓が発生している現実を知る。2022年公開の、実話に基づく映画で、ウクライナ、ポーランド、イギリス共同制作。
あまり後味の悪い映画だったらいやなので敬遠していたが、ショッキングなシーンもあったものの、当時の町並みやファッションを丁寧に再現した美しい映像が印象的な良作だった。

共同制作に加わったポーランドという国は、第二次大戦初期に、ナチスドイツと密約を結んだソ連から同時に侵攻を受け、早期に降伏せざるを得ず、その結果アウシュビッツ強制収容所を設置されてしまい、また、多くのポーランド人がソ連に強制移住させられた。抵抗し続けていなければ、本当の迫害は降伏した後から始まることを知る国が共同制作した理由がわかる気がする。
ポーランドはロシアとは国境を接していないが、現在のウクライナ戦争でロシアが勝てば、ウクライナ軍がすべてロシア軍になり、ロシアが隣国になってしまう。そして、コメディアン出身でスキャンダルの噂もあったゼレンスキー大統領が、意外にも踏みとどまって抗戦を宣言し、講和にも応じないのも、ウクライナ人なら他の道はないのかも知れない。映画を見ながら、そんなことを考えた。

防暑マニュアル

「防暑」という言葉を思いついた。検索するとすでにあちこちで使われている言葉だった。が、昔はなかったように思えるので、AIに尋ねると確かに比較的最近の言葉で、以前は「避暑」が使われていたという。今の暑さにはもはや逃げる場所もなく、踏みとどまって防衛するしかない。でないと命に関わる。そんな時代に、必然的に生まれた言葉だろう。防衛という以上、軍事と同様一人の英雄や秘密兵器ではなく、全体のシステムが最適化されなければならない。単発の「涼しく暮らす生活の知恵」程度では追いつかないのだ。そこで自分なりの防暑マニュアルを作成中だ。

例をあげると、暑くてそうめんくらいしか食べる気にならない日でも、茹で始めると鍋の熱気に当てられそうになる。また、せっかく氷で締めても、食べてるうちにぬるくなって清涼感がなくなってしまうし、茹で汁は熱いうちに排水し、使った鍋も水道で冷やさないと部屋を温めてしまう。
さらに重要なのは食器を冷やすことだ。使い終わって洗った鉢や猪口は、食器棚ではなく冷蔵庫にしまって常時冷やしておく。素材は、長い時間冷えたままでいる厚手の陶器がよく、木や樹脂のザルセットなどは、ほとんど冷えない。何より冷え切った器を受け取ったときの指先から伝わる「ありがたさ」は、極寒日の温かい汁物にも劣らないものだ。
ちなみに、心底冷え切りたいときのために、以前「白糸くずし」というメニューを考案した。残念ながら茶碗蒸しを作る工程があるので、総合的な防暑にはならないと思うが、誰かに作ってもらうなら、最高の冷え経験をお約束できる。

わざわざマニュアル化を考えたのは、暑い日に限ってボーっとしてどんどん部屋を温めてしまったりするからである。まだまだ完成には不十分で、特にレンジや保温調理器の活用や、最近見かける乾麺を水につけておいてから茹でる時短法なども、時間などをきちんと調べてフロー化したい。もちろんそうめん以外のメニューも、さらに衣食住全般も、できるところから防暑マニュアル化したい。
ネット上にはさまざまな防暑アイデアが溢れており、空調服や男性の日傘も一般化している。おそらく10年、20年後の日本人の生活文化は、防暑に焦点をあてた今とはかなり違ったものになっていると思う。

タイトル画像の話 / サーカス!

今回のテーマはサーカス。とタイトルをつけたものの、サーカスについてあまり書くことがない。とっておきのネタはゾウに踏まれた話だが、これは以前に一度書いた。

繰り返しになるが、昭和34年、サーカスのゾウが逃げ出して民家に押し入り、寝ていた幼児の頭を踏む事件というがあったが、中学の同級生がその踏まれた本人だったという話である。語弊があるかも知れないが本人に障害などはなく、外見ではわからないが触らせてもらうと、頭の一部が少し凹んでいた。彼はその後自衛隊に入隊し、戦車に乗っていたという。我々男の子の世界では、勝ち組ヒーローである。

余談だが、イラクのサマーワに自衛隊が海外派遣された際、隊長の人選にあたって優秀な人材が大勢いた中で、「運が良い男」という理由で番匠幸一郎氏が選ばれたという。象に踏まれて生き残った彼も、運の良さでは人後に落ちない。自衛隊というのはふさわしい職業だったのだろう。