ナイトメア・アリー

2021年公開、ギレルモ・デルトロ監督によるサイコ・スリラー映画である。パンデミックによって多くの映画が、映画館での公開が見送られたり、先送りになったりしたが、この作品も撮影期間が大幅に伸びたらしい。

ギレルモ・デル・トロ監督は、ダーク・ファンタジーの傑作「パンズ・ラビリンス」から、「パシフィック・リム」のような巨大ロボット格闘ものまで、幅広いエンターテインメント作品を発表してきた。本作は、1930年代アメリカの巡回サーカス、見世物小屋、千里眼マジック、霊媒師など、少々ダークな世界を舞台にした、精妙な心理サスペンスである。

とりわけ、主人公が駆使する読心術トリックが見どころ。対話相手を観察して性格や職業、家族構成などを当てて見せるコールド・リーディングや、事前に個人情報を調査しておくホット・リーディング、「あなたは慎重な性格だが、時に衝動的な行動に出ることもある」というような、どちらともとれる言い方で錯覚させるショットガンニングなどの騙しのテクニックとその種明かしが面白い。
危ない橋をわたり損ない、追い詰められていく主人公の心情は息苦しく、エンディングも救われないが、一方で社会のダークゾーンを行き来しながら生きる人々への、不思議な暖かさも感じさせる。これは監督の人柄からくるものなような気がする。

Tadd’s Delight

タッド・ダメロン(1917-1965)の作曲。

このコーナーでは、パブリック・ドメインになっている古い名曲を、なるべく新しいプレイヤーの演奏で紹介するようにしてきたが、今回はあえてマイルス・デイビスの名アルバム「ラウンド・アバウト・ミッドナイト」から。王道過ぎて紹介するまでもないが、私にとってこの曲とこのジャケットは、いかにも「ジャズ喫茶」だ。
とはいえ、曲名ははっきり覚えていなかった。年取って、忘れてしまっただけかもしれないが…。ジャズ喫茶ではカウンターの近くに、現在演奏中のジャケットを掲げられていて、それを手にとって見れば曲の情報はすぐわかる。が、それをすると「あいつ、マイルスも知らないのかよ」と思われそうで、なかなか手が出なかったような覚えがある。長年すり減らし続けたせいで、逆に図太くなってしまった爺ィの神経からするとしょうもない見栄だが、我ながら初々しかったなあと思う。

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タイトル画像の話 / バレンタインデー

2月14日はバレンタインデー。そこでタイトル画像を変えてみた。高度な技術は使っていないし、アイデアもデザインも大したものではないが、権利の問題がやかましくなってきた折、簡単にオリジナルができるCGのメリットは大きい。同じ絵を、お絵描きソフトで描こうとするとなかなか大変だ。AIを使えば簡単に権利をクリアした画像ができると思われていたが、最近ではかえって話が面倒になってるらしい。だからといって某いらすとばかりになってしまうのも、味気がない。

CGは少々とっつきづらい部分もあるが、常に最高品質のものをめざさないなら、手軽にほしい画像をつくることができる。以前はよく小さな工務店と組んで、本来完成予想図を提出しないような個人施主などに対し、図面と一緒にCGを提出してプレゼンを成功させた。住宅や施設だけでなく、「工事現場の産業廃棄物分類施設の完成予想図」というような、あまり完成予想図を作らない分野で効果を発揮した。仕事が取れなかったら薄謝程度という約束だったが、他社がそこまでしないのだからなかなか成功率が高く、均せば十分良い仕事になった。これが仕事が決まった後の正式な完成予想図の依頼だと、コストや時間のかかる画像素材を使わなくてはならなくなる。低品質だが安上がりで、手早くCGを作ることに徹したので、図面のおまけにつけることができた。
CGが登場したときには、誰でもそういう使い方ができる時代が来ると言われていたのだが、使う環境が整う割に軽便な利用が進んでないような気がする。