Someday My Prince Will Come. (いつか王子様が)

フランク・チャーチル(1901-1942)が作曲した、ディズニー映画「白雪姫」の主題歌。この曲を取り上げているジャズメンといえば、やはりビル・エヴァンスだろうということで。特に日本人に人気のピアニストだが、ここに登場するのは初めてだった。ベースがエディ・ゴメス、ドラムがマーティ・モレルという、ビル・エヴァンス・トリオとして、一番長く活動したメンバーである。近年新しい音源が発見されるのも、このメンバーのものが多いそうだ。いつの、どういう場所での演奏かはわからないが、アルバムテイクではないような気がする。そのへんは聴き込んだ人にはすぐわかるのだろうが。
古い時代のものとはいえ、こうしてフィルムが残ってさえいれば、youtubeで見ることができる。当然演奏活動はレコードだけではないのだが、昔はそれくらいしか接する機会がなかった。今ならプレイヤーによっては、アルバムに収録されている以上の数の、それまで知らなかった演奏に触れることができる。全くありがたい時代になったものだと思う。

When You Wish Upon a Star(星に願いを)

リー・ハーライン(1907-1969)による、ディズニー映画「ピノキオ」の主題歌。ピノキオというより、ディズニー映画、ディズニーランドそのもののテーマと言っていいだろう。誰でも一度は聞いたことのある名曲だ。今までバブリック・ドメインのを名曲を何度か紹介してきたが、作曲者のハーラインの没年で分かる通り、この曲は作曲者の死後50年を経ていないので、まだパブリック・ドメインではない。来年、2019年にそうなる予定だったのだが。

先日、参議院は著作権の権利保持期間を50年から70年に延長する法案を通過させ、年内にも施行される見通しとなった。著作権期限の延長はTPPの重要項目だったが、アメリカがTPPから離脱してしまった。急ぐこともない案件だったはずなのに、今頃急に改定したのが不思議だったのだが、この曲に気づいて「ああ、これか」と思った。

ハリウッドを代表するディズニーの顔とも言えるこの曲が、日本だけとは言え永遠に権利が消失してしまう。その損失は金銭だけではすまないだろう。日本としては、空母まで出してもらった借りもある。何より戦後、「コンバット」や「ローハイド」など、無数のコンテンツを無償で提供してもらっている。その中にはもちろんディズニー作品もあり、我々もそれを見て育ってきた。もともと彼らが努力して価値を高めてきたものを、あまりやきもちさせる前に権利を保護してやったのだから、なかなか紳士的で価値のある忖度だったと言えるかもしれない。
実はこの曲は、来年紹介しようとチェックしてあった曲だった。こういう名曲はパブリック・ドメインになって人類の共有財産になってほしい気持ちもあるが、ミッキーの顔を立てて、21年後まで長生きすることにした。

動画はキース・ジャレット(P)の演奏。ドラムはジャック・ディジョネット、ベースはゲイリー・ピーコックである。いきなり三拍子のイントロが始まったので違う曲かと思ったが、6/8にアレンジした演奏である。

PLAY ALONG

YoutubeでPlayAlongというキーワードを検索すると、さまざまな曲の伴奏部分だけの動画が出てくる。これを流しながら、楽器の練習するための伴奏動画だ。たとえばJAZZをキーワードで検索すると、こんな具合に古今東西の名曲が並ぶ。ポピュラー曲のplayalongも多いようだが、クラシックや民族音楽などはあまりないようだ。曲の前にカウント音が入ってるのもあるが、入ってないのも多い。

https://www.youtube.com/user/Learnjazzstandards/videos?sort=p&shelf_id=2&view=0

楽器の練習用ではあるが、カラオケのように歌を歌うこともできるだろう。ただし、ジャズの演奏からメロディ楽器を抜いたものなので、カラオケと違って主旋律が小さく流れるといった手助けはない。どのあたりを演奏してるかはコードの流れなどを聞き取らなければならないが、そこはジャズだけに代理コードなどが多く、ちょっと聞いただけでは原曲と似ても似つかないことがある。とはいえ、動画だけ聞いてメロディラインを思い浮かべやすいものは、とっつきやすいが、音を合わせてみるといかにも「お稽古」という感じで、ちょっとダサい。逆に原曲のメロディが行方不明になってしまうような凝った伴奏は、がんばって合わせてみると「あ、セッション!」という感じがする事が多い。

また、何コーラス分か、アドリブ用のパートを用意してある演奏もある。アドリブまで手が出ないとしても、テーマの繰り返し練習にうってつけだ。実際に動画に合わせて演奏するのは、最初はきつい。単独で弾いていた時には問題ないと思っていた部分が、寸足らずだったり間延びしていたりで、これまでの上達具合いが急に後退してしまったような気分にさせられる。が、ちょっと慣れると、一人のときより助けてもらっているという、リラックスした感じがしてくる。やはり上達が早まるような気がする。

ちなみにこういう場合の著作権はどうなっているんだろう?名曲、名演奏のタイトルをつけてはいるものの、メロディが流れていないのだから、原曲の作曲家等の権利には引っかからないと思うのだが。

ブラジル

「未来世紀ブラジル(原題Brazil)」という映画がある。封切りを見逃し、そのうちレンタルビデオでも見ようと思って何度か探したが見つからず、ビデオもレーザーディスクも製造中止と知り、二度と見ることはないと諦めていた。だが先日、何と公開から33年も経って、ようやくレンタルで見ることができた。

さてその未来世紀ブラジルだが、架空の未来社会を舞台にして、冷酷で滑稽な管理社会と、組織を風刺したSFコメディ(?)だ。市民の暮らしは情報局と管理システムにより常に監視され、統制を受けている。たとえば主人公の部屋の空調が故障した。修理は政府の正式な空調修理職員に頼まなくてはならない。だが、その夜、銃を片手に非合法の空調修理職人が押し入ってきて、鮮やかに修理して見せる。正規の職員には技術がないから非合法でも自分が直さなければならないが、氏名手配されているので罠が待ってるかもしれない。だから住人を銃で脅して修理するのだ。そして無事空調は直るのだが、その後正式の職員が来て、だいなしにしてしまう。万事がそんなふうに皮肉なユーモアに満ちた、いかにもテリー・ギリアム監督らしい作品だ。
建物や乗り物、コンピュータなどはレトロなデザインで、いわゆる未来的な光景ではない。85年公開といえば今となっては相当に古臭さを感じるはずだが、最初からレトロな美術のおかげで古臭さは感じなかった。

その未来世紀ブラジルで流れるのが、Aquarela do Brasil(ブラジルの水辺)、別名「ブラジル」である。作曲はAry Barroso(1903-1964)で、映画よりずっと前からあった曲である。監督はこの曲を聞いて映画の着想を得たそうで、映画のタイトルにもなっているのだが、作品は南米ブラジルと一切関係がない。なかなかへそ曲がりな映画だが、曲はTVの海外取材番組のブラジル編などでよく流れるので、聞けばだれでも知っているのではないかと思う。

ところで、日本での著作権の権利保持期間が、作者の死後50年から70年に延長されることになる。もともとはTPPの項目としてアメリカが主張していた項目だが、アメリカがTPP不参加の中で日本が自主的に参議院で法案を通した。年内にも施行される見通しだ。そうなるとここで紹介する曲も、死後70年を過ぎたものということになり、一気に馴染みの薄いものばかりになるかもしれない。ただし、これまでパブリックドメインとして紹介済みの曲の権利が復活するということはない。

もちろん収益を伴わない上演は最初から著作権の対象外だが、問題は好きな音楽に何重にも権利をはりめぐらせ、たえず運用が強化されていくのも見ると白けるということだ。それこそ「未来世紀ブラジル」で描かれた、滑稽な管理社会を笑えない。

朝日のようにさわやかに

シグマンド・ロンバーグ(1887-1951)の名曲。日本では特に動画のMJQ(モダン・ジャズ・カルテット)の演奏が有名で、あまりジャズに詳しくない人でも、聞き覚えがあるのではないかと思う。ビブラフォーンというのはそれほど頻繁に使われる楽器ではないが、透明で輝くような音色は、まさにこの曲のタイトルにぴったりだ。