Silent Night/7 O’ Clock News

今日はクリスマス・イヴ。パブリック・ドメインになってるものがないか探してみた。その中から、オーソドックスな「きよしこの夜」(フランツ・クサーヴァー・グルーバー/1787 – 1863)を、サイモンとガーファンクルの歌で。

「きよしこの夜/7時のニュース」というタイトル通り、背景にラジオニュースの音声が流れ、だんだんと大きくなってくる。内容はコメディアンの麻薬死、キング牧師のメモリアルパレードを妨害しようとする警察官僚、9人の看護学生の殺人事件に対する裁判、反ベトナム戦争集会での乱闘、そして、ベトナムでの戦争努力の増加を促し、戦争に反対することを「アメリカに対する最も強烈な武器」と語る、前米副大統領リチャード・ニクソンの演説。

どうか今夜の7時には、ミサイルのニュースが流れませんように。

As time goes by

ご存知、映画「カサブランカ」の主題曲で、作曲はハーマン・フップフェルド(1894年 – 1951)。
演奏しているビージー・アデール(Beegie Adair)は今年79歳になる女性ジャズピアニスト。大ベテランの割に名前を聞いたことがないのは、60歳代後半から注目されたから。youtubeで検索すると、Fly me to the moon,、酒とバラの日々、枯葉などの超々オーソドックスなナンバーが、オーソドックスなスタイルの演奏で並んでいる。あまりにオーソドックすぎて、若いジャズメンだったらもう少し冒険しても、と思うところだが、そこは年の功。無数のプレイヤーが演奏してきた名曲を、何万回も弾き続けてきて、誰よりも自分のものにしているという感じだ。

ミッドナイト・スペシャル

アメリカの民謡。かつて、クリーデンス・クリアウォーター・リバイバルの演奏が日本でも流れた。また、スピルバーグの映画「トワイライト・ゾーン」の冒頭で、ドライブ中の男二人がノリノリで歌うシーンにも登場した。
メロディは陽気だし、歌詞も「深夜特急よ、オレを照らしてくれ」と繰り返すばかりで、大した意味などない脳天気な曲のようだが実はけっこう深い。黒人差別が激しかった頃、警察は黒人だというだけで因縁をつけ逮捕した。そうやって理由もわからずいつまでも拘束される黒人たちの間で、拘置所の鉄格子の窓から差し込む深夜特急の明かりを浴びた者が釈放された、というデマが流れるようになった。極限状態でまともな判断力をなくした黒人たちは拘置所の窓にすがりつき、深夜特急を待ちわびる、という曲である。
そういえば南北戦争の頃、南部の奴隷を連れ出してひそかに北部に運ぶ白人の組織があって、名前を「Aトレイン」と言った。(エリントンの名曲とは関係がないらしい)鉄道というのは、黒人の差別からの開放の象徴なのかもしれない。とかっこつけて真面目ぶってみたが、やっぱり脳天気な曲だ。

サマータイム

さまざまなジャズ・ミュージシャンに取り上げられている、ジョージ・ガーシュイン(1898-1937)の作品。「ラプソディ・イン・ブルー」など、数々の名曲を残しているが、わずか38歳の若さで亡くなっていたとは知らなかった。

若さつながりで、今回はユッコ・ミラーの演奏で。冒頭の掛け声やコスプレもどきの衣装を見てたかを括っていたら、突然骨太なジャズが始まって驚いた。

高校1年の時友達に誘われてブラスバンド部に入り、サックスを手にしたという彼女。在学中はストリート・ライブも続けた。また、グレン・ミラー・オーケストラのコンサートに行き、終了後に楽団員をつかまえて腕前を披露したところ、「明日からツアーに参加しないか?」と誘われたが、「学校があるから」言って断ったというエピソードもある。現在25歳で、動画は20歳ころのもの。すでにアルバムを出し、ジャズファンの間でも知られた存在となっている。

演奏は「若い」とか「女性」とかいう枠を超えて、現代のサックスプレイヤーの中で、堂々のトップクラスだ。アルトサックスとは思えないほど太く男性的な音が特徴的だ。独自のステージ衣装は、単に好きだからなのかもしれないが、デビューの鮮烈な登場感を狙い、メディアのレッテル貼りをはぐらかそうとする頭の良さも感じる。
17歳で報道ステーションのタイトル音楽を作った矢野沙織や、札幌出身で同じく25歳の寺久保エレナなど、近年なぜか女性のジャズサックス奏者が続出している。彼女たちの親の世代にはジャズファンが多いが、子供の代に受け継がれるほど、日本にジャズが定着したのかもしれない。

オールマンリバー

オール・ザ・シングス・ユー・アー」や「煙が目にしみる」とおなじ、ジェローム・カーン(1885~1945)が、映画「ショーボート」の劇中歌として作曲した。ジェローム・カーンの曲は、現代でも自然に聞ける名曲ぞろいで、パブリック・ドメイン愛好家にとってはありがたい存在だ。
オールマンリバーは、曲はしってるが、はるか昔に名画劇場で映画を見たくらいの記憶しかなく、それほど馴染みが深いわけではない。プレイヤーの演奏例も少ないのだが、かの昭和の大スター、クレイジー・キャッツの10周年コンサート動画の中にあった。

クレイジー・キャッツは、今日のバラエティ番組の礎を作ったとも言える大スターだ。マンガの手塚治虫、アニメの宮﨑駿とどっこいの貢献度ではないかと思う。動画を見ると、ジャズ・プレイヤーとしても並々ならぬ腕前だったことがわかる。オールマンリバーは動画の10分過ぎたあたり。ハナ肇のドラムソロも聞ける。

バラエティ番組は、こういう実力者が現代とは比べ物にならない不便な環境の中で創り上げてきたものだが、今日のメディアにそのDNAが残っているかどうか...って、TVも見ない人間に言われたくない?こりゃまた、失礼しました!