Tadd’s Delight

タッド・ダメロン(1917-1965)の作曲。

このコーナーでは、パブリック・ドメインになっている古い名曲を、なるべく新しいプレイヤーの演奏で紹介するようにしてきたが、今回はあえてマイルス・デイビスの名アルバム「ラウンド・アバウト・ミッドナイト」から。王道過ぎて紹介するまでもないが、私にとってこの曲とこのジャケットは、いかにも「ジャズ喫茶」だ。
とはいえ、曲名ははっきり覚えていなかった。年取って、忘れてしまっただけかもしれないが…。ジャズ喫茶ではカウンターの近くに、現在演奏中のジャケットを掲げられていて、それを手にとって見れば曲の情報はすぐわかる。が、それをすると「あいつ、マイルスも知らないのかよ」と思われそうで、なかなか手が出なかったような覚えがある。長年すり減らし続けたせいで、逆に図太くなってしまった爺ィの神経からするとしょうもない見栄だが、我ながら初々しかったなあと思う。

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Love Letters

ビクター ヤング(1899] – 1956)の曲。演奏はソニー・ロリンズ。

テンポにとらわれない叙情的なソロから始まって、ドラムとベースによるシンプルでリズミカルなトリオ演奏へ。サックスの醍醐味を味わい尽くすようなゾニー・ロリンズの演奏である。

アーチストによって、ソロ部分を新たな旋律として演奏する人と、リズムや和音の奔流として演奏する人がいる。ロニー・ロリンズは代表的な前者のプレイヤーだろう。また、どちらのタイプにも、あらかじめ引き出しにある十八番のフレーズを取り出してくる人と、本当の即興をする人がいて、彼は後者のタイプだろう。ステージでも次々新しいフレーズを紡ぎ出すあまり、打ち合わせを超えてソロ時間がどんどん延び、まわりの演奏者がテーマに戻るタイミングを測りかねてしまう、という光景を何度か見た。きっと冒頭のようなソロを、延々と拭き続けていられるのだろう。そんなふうにできたら、どんなに楽器が楽しいだろうと思う。

ところでこの動画には「Auto-generated by YouTube.」、You Tubeによって自動的に作られた、という文字がある。よく意味が分からないが、公式サイトだって管理者によって情報提供にマメだったりそうでなかったりする。過去のアルバムだけでなく、後に発掘されたライブや放送の動画もAIなどがきめ細かく拾い上げて、まとめてくれているのだとしたらうれしい限りだ。

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Lady Be Good

George Gershwin(1898 – 1937)の曲で、歌はSamara Joy。若い歌手だが、古いスタンダートを取り上げてくれるので、最近のお気に入りだ。

もともとはゆっくりした曲だが、ここではエラ・フィッツジェラルド風のソロ・スキャットを披露している。私は、エラ・フィッツジェラルドやサラ・ヴォーンから聞き始めたせいで、昔はジャズ・ヴォーカルといえばスキャットがつきもののように思っていたが、誰もができるものではないらしい。楽器でソロのメロディを作り出すだけでも大変なのに、歌詞(?)まで作らなければならないわけだ。

スキャットと言えば、その昔、サラ、ヴォーン日本公演のステージで、アンコールで歌ったバイバイブラックバードの歌詞をスキャットに変えていた。これは歌詞を忘れたんだと思うが、練習やジャムセッションなら、しょっちゅうやっていても不思議ではない。それをさらにアドリブのメロディで歌うようになったというあたりが始まりだったのかもしれない。 スキャットのヴォーカルは前から紹介したかったが、ようやく見つけた。存分に楽しんでほしい。
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