タイトル画像の話 / 氷、ガラス

今回のポイントは背後の文字ではなく、手前の氷の結晶の表現。サムネイルではわかりづらいので、下記の画像をクリックして拡大してみてほしい。

透明な物体は難しい。我々が知ってるガラスや氷は、ある部分は背後が透けて見え、別な部分で鏡面のように周囲を写し込み、なおかつ所々に光を強く反射したハイライト部分がある。CGでは物体の見え方を「透過」に切り替えることはできるし、反射率や透過率、内部の屈折率まで自由に変えられるが、数値を調整しないと氷に見えないということでもある。氷のはずなのにアクリルっぽいということになる。

そのため物体の数値だけでなく、ライトの位置を変えたり、ハイライトをつけたい物体だけ照らすが他のものには影響しないという、CGならではのイカサマなライトを付け足したりというように、画面全体の調整が必要になる。今回の画像では、左右の結晶のように、透過させたはいいが背後に溶け込んでしまい、結晶の外形がよくわからなくなってしまった。
そこでCG空間で調整するのをあきらめ、一旦画像に書き出したものにお絵かきソフトでハイライトを書き込んでしまった。それが真ん中の結晶である。イカサマライトを使うくらいなら、絵で書き込んでも同じこと。そういう居直りもCGのノウハウのうちだ。

タイトル画像の話/テーブルクロス

絵画の並ぶ回廊に、イスが一脚とテーブル。足元には深くて暗い深淵が...。というちょっと不気味なCGを作ろうとしたが、深さがうまく表現できなかった。多分、画角や照明の当て方の問題だろう。現実にはありえない光景はCGの真骨頂だが、見たことのないものに対する、作者のイメージ力の限界かもしれない。

さて、技術的にはテーブルクロスが今回のポイントで、シワのより具合など、手作業では造形が厄介な作業を、Blenderが自動的に行なってくれたもの。「物理演算」という技術である。CG空間は上も下もなく重力のない世界で、鉄塊でも空中に置けばそのまま落ちることはない。布のテーブルクロスも同様で、何もしなければいつまでも四角いままで空中にあるが、「物理演算」の機能を使うと、重力があるかのように下に落ちて行って自然にテーブルを覆う。シワのより具合など、実際に覆ったらどうなるかをBlenderがシミュレーションしてくれるのだ。
布の厚みや重さはもちろん、重力の強さなどもユーザーが指定できる。また、水面を揺らした時の揺れ具合、積み重ねた物体が衝突で飛び散る様子など、さまざまなものをシミュレートできる。ただし、布の様々な部分の動きを計算し尽くさなければならないので、この技術が登場したころはかなり高性能なコンピュータが必要だった。髪の毛や動物の毛の動きなども物理演算でなければとうてい表現できないものなので、最初の「トイ・ストーリー」は、ぬいぐるみではなく表面がつるつるのプラスチックのおもちゃが登場する話にしたのではないかと思っている。

その昔にCGをいじっていた頃、物理演算の登場には驚かされたものだ。当時はスーパーコンピュータなどの高速演算環境がなければ出来なかったので、自分には縁がないと思っていたが、Blenderと少々くたびれたPCでもできてしまった。感動的である。昔の自分に自慢したい。

さて、実際の作業の作業は、例えばこんな動画を見るとよくわかる。見てわかるとおり実に簡単な操作だ。長年敬遠していたことが実は簡単にできることがわかる。それもまた、今の時代のいいところだ。

30タイプのフィドル演奏スタイル

フィドルとはバイオリンのこと。この2つは全く同じ楽器だが、カントリーなどのPOPSや民族音楽で使うときはフィドルと呼ぶ。バイオリンはクラシック音楽の楽器という印象が強いが、実はさまざまな国の民族音楽で使われていて、むしろクラシック以外の演奏者のほうが多いのではないかと思うほどだ。

民族音楽でのフィドルの演奏スタイルは、国が違ってもどことなく似ている気がしていたが、それを一堂に集めた動画があった。

早いテンポで絶え間なく音を出すスタイルは、ヨーロッパの民族音楽のほか、カントリーやブルーグラスなどのアメリカ音楽にも登場する。これは一見高度なテクニックのようだが、一度置いた左親指のポジションをその場から動かさず、4本の指で無理なく届く範囲の音を拾い続けるだけ。ビブラートもあまり使わないので、派手な割に慣れれば演奏しやすいかもしれない。
フィドルの軽快なリズムは、集まって手拍子を打ち、踊るのにぴったりだ。また、フィドル自体も非常に軽く、最初に我が家に届いたときも梱包込みなのに中身が入ってるのか心配になったほどだ。酒場でも屋外のダンス会場でも、どこでも気軽に持ち込んで観客の踊りのBGMを奏でたのだろう。そして人々がヨーロッパから新大陸に移民したときにも、軽いフィドルは他の楽器よりもたくさん持ち込まれ、故郷の音楽のスタイルとともに広まっていったのではないだろうか。

ところでこのプレイヤーのフィドルは、黒いフィンガーボードの上に、白い松ヤニの粉がついたままだ。こういうことをするのはクラシックのバイオリニストではなく、フィドラーである。だから私もそうしようとしばらく松ヤニをとらないでいたが、松ヤニの上にホコリが付着してひどいことになってしまった。外見だけマネしても、フィドラーにはなれないということだ。