高齢者はスターウォーズを熱く語る 1

先日、タイトルにある一文を読んで、愕然とした。そういえば、最初の封切りは1977年、なんと40年前である。思わず電卓で計算し直したから間違いない、40年である。
当時のファンは実に熱く、日本上映を前に、アメリカまで観に行く者が続出した。今のようにLCCなどなく、しかも1ドルが300円だった時代に、である。むろん我々も負けてはおらず、封切り前にアメリカから16ミリフィルムのダイジェスト版を取り寄せ、自主的に先行上映会を開いた。同じ映画を何度も観るというのも、このときからだったような気がする。アメリカのファンはさらに熱かった。手作りのベイダー卿やストーム・トルーパーのコスチュームで映画館に臨んだ。思えばこれが、今で言うコスプレの嚆矢である。そんな熱いヤツらが、「高齢者」の一言でくくられてしまったのである。

もう、いいもんね。ジジイと言われても、居直って熱く語っちゃうもんね。と言うわけで、全てが名シーン、全てが名セリフという中で、私が一番印象に残っているセリフは、1999年のエピソード1、ファントム・メナスの1場面だ。後のダース・ベイダーとなるアナキン少年に、ジェダイ・マスターのクワイ・ガンジンが問いかける。
「修行はつらいぞ」
するとこう答えるのだ。

「それが私の望みです」

聞いたか、若造ども!ジェダイの修行は宇宙一過酷で、ブラック企業など目じゃない。地球だったら児童福祉法違反でパクられるくらい大変な修行を、望みだと言ってしまうのだ。福利厚生がどうのと、つべこべ言ったりしないのだ。

最初のエピソード4.5.6の後、続編をあきらめかけるほど待たされた上、我々もすっかり擦れっ枯らしになって、昔の熱気を忘れかけていたときに浴びせられたこの一言。思わず堕落した己の魂を恥じ入り、宇宙の続く限りベイダー卿についていこうと心に誓ったのであった。

セッション(アメリカ映画/2014年)

先日のアカデミー賞®で、「ラ・ラ・ランド」で最年少監督賞を受けたデイミアン・チャゼル監督の、28歳の作品である。たまたま動画サイトで見て、感想を書き始めたところで受賞のニュースが入ってきた。

(以下感想)
とんでもない映画を見てしまった。ファーストシーンから魂を鷲掴みにされ、そのまま心臓を締め上げられ続けて、途中何度か死んだかと思う、そんな映画である。音楽を少しでもやったことのある人には是非見てほしいが、何しろ「能力のない奴はロックをやれ」というような言葉が出てくる作品だ。映画界、音楽界、ともに賛否両論で、公開時にはかなり論争もあったらしい。その論争自体が、この映画をよく表している。
世界最高峰の音楽学校で、ジャズドラマーを目指す青年と、彼を過酷なやり方で指導する教授の物語である。が、現役ジャズメンからの評価が極めて厳しい。いわく、セッションと言いながらセッションのシーンがない(これは邦題の付け方の問題)、指導の方法が間違っている、そのほか、時折汚い言葉も交えて、要は「これはジャズではない、ウソがある」という。それに対して、映画ファンや評論家の評価は絶大で、「そのウソがすばらしいのだ」と、真っ二つに別れている。

現役ジャズメンを怒らせたのは、おそらく「Good job!(グッジョブ」という言葉がジャズをダメにした」というセリフだろう。ジャズは一人ではできない。プロ同士なら、演奏中のミスをカバーしあい、ステージから降りたら労をねぎらうのは当然だ。が、この作品では、だから今ジャズの巨人が生まれないのだという。ミスを許さないのはもちろん、自分にもメンバーにも、もっとエゴを押し通せという。さらに、ジャズメンは演奏で語れ、ということまで作品で表現してるのだ。これは仕事のジャンルこそ違え、かなり耳が痛い。この映画に反論したジャズメンは、非常に勇気があったと思う。

鑑賞中、始めはひたむきな姿に共感し、そのうち、自分にはバイオリンなぞやる資格はないとかなり恥じ入った。が、ラストシーンを見終わった後に、何を言われようとやりたいからやるんだというエゴがムクムク起き上がって来るのを感じた。
それにしても、これが28歳の作品だよ。同年齢の自分なんて、ただのアンポンタンだった。

刑事ドラマとアメリカの警察

刑事コロンボやダイ・ハードなど,アメリカの映画やTVドラマの主人公は刑事が多いが,日本の警察の刑事とは全く違う複雑な階級制度で,それどころか,舞台となるロサンゼルスやニューヨークの警察組織は,お互いになんの関係もない、独立した組織だということを近年知った.アメリカの州はそれぞれが独立した国のようなものだから,どれぞれ独立した警察組織を持つ.ロサンゼルスやニューヨークなどの大都市には,独自の警察組織があってそのトップは市長である.だからいくら敏腕刑事が犯人を追ってやむなく訪れたとしても,他の市では一切捜査活動ができない.だからドラマでは,そのへんの葛藤をうまく盛り込んだシナリオが多い.その点FBIは州を跨いで捜査ができるが,市警察や州警察の上部組織ではない.

また,現在でも「保安官」がいる.しかも相当地位が高く,高層ビルに立派なオフィスを構えていたりする.その他にも,大学や各種の組合にも,独自の警察組織がある.沿岸警備隊は別の組織だし,ニセ札の捜査は,大統領の護衛をするシークレット・サービスの役目だ.

こんなにたくさんの警察組織があるのは,民主主義の本家だからだ.市民は自分や家族,財産を自衛する権利があり,さらに市民の集まりである組織も,独自に保安のための手段を持てるということらしい.保安官の地位が高いのも,選挙で市民から選ばれるから.市長が任命した職員である警察官よりも地位が高く権限が大きい.「お上」という雰囲気のある日本の警察と比べると,筋が通っているような,いないような,妙な感じがする.警察の組織や階級については映画やドラマの翻訳者も困っているようで,とりあえず何でもかんでも「刑事」にしてしまうらしいが,階級がテーマになるエピソードだと,苦労していると思う.

さて,刑事物の話題にふさわしく,最後に長年の謎に関する意外な真相を。
「コロンボ刑事のファーストネームは”フランク”だ」