バレンタインスペシャル / 君の名は。

バレンタインデーにちなんで、このブログの読者は多分見てないと思うが、気にはなっているであろう「君の名は。」を見た。広告関係者として一見の価値ありなので、レンタルに降りてきたらと思っていた。が、大変なヒットになってしまい、いつになるかわからなかったので。「結婚したくなる映画」というレビュー記事があったことも気になっていた。はたして何か新しいトレンドが生まれたかどうか。

新海作品の特色は、背景画像の美しさだ。それも、駅のホームや雑居ビルの立ち並ぶ街角、ごく普通の住宅地の家並みなど、本来それほど美しくはないはずの光景に、丹念に光の装飾加えて、夢のような光景に仕上げる。
恋人ができたり、入試に合格したり、大金が手に入ったりというような、人生の幸福の絶頂には、アドレナリンが湧き出し瞳孔が開いて、いつもの風景もこんな風に見える。その瞬間を再現してみせたような背景である。日常生活に直結している分だけ、世界自然遺産やマハラジャの宮殿よりずっと良い舞台装置だ。その中でなら、どんな商品もさぞ魅力的に見えるだろう。

わざわざ見に行く気のない人のためにざっくりいうと、同じ監督による以下のCMがこの映画のエッセンスだと思っても良いだろう。

親の経済力の差が子供の学歴の差になると言われている時代に、通信教育だけで、離島の少女と都会のアルバイト少年が東大に合格するばかりか、恋人までできてしまう。普通はそんなCMを流せば噴飯モノだが、新海ワールドの中なら、それもアリかなという気になってしまう。聞き取りやすい日本語の曲が前面に出るという、PVやCM的な手法も、映画と同じだ。

我々世代向きの作品ではないのでオススメというほどではないが、映像のヒーリング効果はなかなかのものである。ネタばれせずに書けるのはこんなところなので、そのうち内容について書くかもしれない。

 

ジャイアントロボとワルシャワ国立フィルハーモニー管弦楽団

横山光輝作の漫画「ジャイアントロボ」が,1992年から全7巻のアニメになった.内容は三国志や水滸伝,鉄人28号,魔法使いサリー,仮面の忍者赤影など,横山作品オールスター総登場のオリジナル・ストーリーで,原作とは関係がないという怪作である.

92年と言えばバブル崩壊に片足を突っ込んだ時期.BGMをフル・オーケストラに演奏させるという,バブルな計画が進んでいたこのアニメも,先行きが怪しくなってきた.国内でオーケストラを使うと莫大な費用がかかる.そこで,ポーランドのワルシャワ国立フィルハーモニー管弦楽団に打診したのである.

ポーランドは1989年にソ連邦から離れたが,市場経済の道は厳しく,それまで国策として手厚い支援を受けてきた交響楽団も,経営が厳しくなっていた.そこへ日本からのオファーである.日本のアニメなど,今ほど有名ではなかった時代だから,内容はよく分かってなかったとしても不思議はない.
制作側からすれば,バブル崩壊したとは言え,東欧の物価は桁違いに安い.彼のショパンの国の,国立フィルハーモニーという敷居の高さを乗り越えてみれば,両思いみたいなものだった.

「ジャイアント・ロボ TheAnimation-地球が静止する日」メインテーマ

MIDIでも構わないようなアニメのBGMにフル・オーケストラなど,前代未聞だったが,さすがに本物はすごかった.ロボットが取っ組み合いをしているだけなのに,感涙がこみ上げてきそうになるのである.

作品はその後,6年の年月をかけて全7巻で完結した.世の中がじわじわと「失われた20年」に進んでいく中で,なんとかクオリティを下げずに作り続けたため,超スローテンポになってしまった.ワルシャワ・フィルは,この作品を機に日本との縁が出来上がり,今でも,アニメやゲーム,テレビドラマなどに,ちょくちょく登場している.

ゲーム・オブ・スローンズ(GAME OF THRONES)

最近小説や映画,ドラマが楽しめない.登場人物の名前や顔が覚えられなかったり,話の流れがつかめなかったり.なによりストーリーに食いついていく体力がない.一番問題なのは,今まで見てきた多くの映画や小説先のせいで,どれも先が読めてしまって,驚きがない.年を取ったのかなと思っていたのだが,そんな不安を吹き飛ばすアメリカのTVドラマに巡り会った.「ゲーム・オブ・スローンズ」である.(知ってる人にはいまさらな話だと思うが)


数年前から,海外のさまざまなサイトで取り上げられていたので,気にはなっていたのだが,テーマ曲がバイオリンの演奏動画になっていたり,知人からの強いお勧めもあって見ることにした.幸いネット配信サービスがあって,1カ月間無料。延長せずに解約しても可というので,いざとなったら超特急で見終えて解約するつもりで見始めたのだが.

すごいのなんの,2011年の放送開始以来6年連続でエミー賞を受賞していて,その数は史上最多の38個.脚本も特撮も,現代だからできるありったけを注ぎ込んだような作品だ.映画では納まらないのでTVシリーズにしたとも言われている.

舞台は中世ヨーロッパを思わせる架空の世界.7つの王国が,それぞれ権力闘争と他国との戦争に明け暮れているところに,全世界を破滅させる強大な敵の影が近づく,という話である.魔法やモンスターも出て来るが,ファンタジーものにありがちな,それ一発で状況がひっくり返るような安易な使われ方はしない.あくまで人間の欲望や恐怖,生き残るためのあがきが物語を進めていく.そしてとにかく残酷とエロシーンが強烈で、しかも暴力的だ.子供はもちろん,誰にでもおすすめできる作品ではないかもしれない.

だが,その壮大さと緻密さ.主要な役だけでも何十人にもなるが,一人ひとりの顔や名前はもちろん,それぞれの持つストーリーが頭に刻み込まれていく.そして,次の瞬間に何が起きるのか,全く予測がつかない.一人の心の中の葛藤から大平原での大軍同士の戦闘まで,いきいきとダイナミックに描かれ,歴史上の文豪や詩人が描きたかったのは,こういう世界なのだろうと思わせるほどだ.

また,女性の描かれ方が素晴らしく,さまざまな魅力的なキャラクターが登場する.王宮内の権力争いも結局暴力で片がつくくらいだから,女性の地位などないも同然.政略の道具にされたり娼婦になるのはマシなほうという世界で,過酷な境遇に負けず,ギリギリのところで生き残っていく.

peter

主役がいないような作品だが,最も印象的な役柄を演じたのは,この作品でエミー賞助演男優賞を2度獲得したピーター・ディンクレイジだろう.身長135センチの小人症の彼は,作品の中では,王族に生まれたから生かしておかれただけの余計者で,欲望に忠実に生きている.最後は暴力という世界で,身体的ハンデを権謀術数で補いながら,あらゆる悪徳と悪巧みに手を染める.障害者だからといって,必要以上に聖人君子に描かれるようなことはなく,それでいて魅力的な個性を持っている.はじめは卑小で屈折した人物が,陰謀家の立場は変わらないものの,徐々に将軍や王者のような風格を備えてゆく有様は,他では例を見ないほどだ.