ナイトメア・アリー

2021年公開、ギレルモ・デルトロ監督によるサイコ・スリラー映画である。パンデミックによって多くの映画が、映画館での公開が見送られたり、先送りになったりしたが、この作品も撮影期間が大幅に伸びたらしい。

ギレルモ・デル・トロ監督は、ダーク・ファンタジーの傑作「パンズ・ラビリンス」から、「パシフィック・リム」のような巨大ロボット格闘ものまで、幅広いエンターテインメント作品を発表してきた。本作は、1930年代アメリカの巡回サーカス、見世物小屋、千里眼マジック、霊媒師など、少々ダークな世界を舞台にした、精妙な心理サスペンスである。

とりわけ、主人公が駆使する読心術トリックが見どころ。対話相手を観察して性格や職業、家族構成などを当てて見せるコールド・リーディングや、事前に個人情報を調査しておくホット・リーディング、「あなたは慎重な性格だが、時に衝動的な行動に出ることもある」というような、どちらともとれる言い方で錯覚させるショットガンニングなどの騙しのテクニックとその種明かしが面白い。
危ない橋をわたり損ない、追い詰められていく主人公の心情は息苦しく、エンディングも救われないが、一方で社会のダークゾーンを行き来しながら生きる人々への、不思議な暖かさも感じさせる。これは監督の人柄からくるものなような気がする。

デリシュ!

2022年フランス映画。フランス革命直前に誕生した、「世界初のレストラン」の物語。料理人の登場する映画は面白いものが多い。きっと自分は、仕事がテーマで、仕事に打ち込むことで様々な問題を克服するというのが好きだからなのだろう。これもまた観てよかったと思える料理人の映画だ。
貴族の館で料理長を務めるマンスロンは、会心の新作メニューをめぐるトラブルから解雇。失意の中、意外な人物の登場から料理への情熱を取り戻すのだが...。

ハリウッド製ではないからだろうか、ストーリーはひと筋縄でいかない。大声や、オーバーアクションのない抑えた演技ながら、次々と気になるトラブルが起こり目が離せなくなる。登場人物たちも、善良だが正しいわけではなかったり、悪質な人間だがなんとも言えない個性の魅力を持っていたりと、これも一筋縄ではいかない。そして何よりヨーロッパの古典的な風景画や静物画を思わせる画面が美しい。印象的な本当に良いシーンも多いのだが、できれば観てほしい作品なので、具体的に書かないように苦労した。

視聴はアマゾン・プライムビデオ。残念ながらレンタルショップには無いようだが、1ヶ月の無料期間中に観て、すぐ退会という手もある。2カ月後も継続して観てしまうような作品を提供できるかどうかは、アマゾンのお手並み次第である。
大変だった一年の終わりは、ハートウォーミングな世界に浸って過ごしたい。そんな大人のための佳品である。

警察署長(アメリカTVドラマ)

非常に多忙な友人がいる。映画ファンでもあり、限られた休日の時間を割いては映画を見るのだが、時々「面白い映画はないか」と尋ねられる。そこで以前、どんなのがいいのか聞いたところ、「警察署長」のようなのがいいという。流石にそこまでのレベルはちょっと...と答えるしかなかった。
1983年放映の「警察署長」(全3話)は、同レベルのものを見つけるのが難しいくらい面白い。
その「警察署長」をアマゾンプライムで見つけて再見した。旧ブラウン管サイズの粗い画面に、CMタイム直前のわざとらしいBGMの盛り上がりなど、覚悟していたとは言え、見始めた時はあまりの古さに愕然としたが、すぐ物語に引き込まれていった。

アメリカ南部の架空の町デラノ。第一次大戦後からケネディの時代まで、この街の3代の警察署長たちの物語である。第一話では西部開拓時代の名残りを残す町並みが、やがてビル街に。その間、良くも悪くも変わらない年寄りと、あっという間に大人になって新しい時代を切り開いてゆく子どもたち。その、いかにもアメリカらしく明るく力強い舞台裏では、忌まわしい連続殺人事件が、未解決のまま歴代の署長たちに引き継がれてゆく。

とにかくエピソードの作り方が上手く、昔見たはずなのに引き込まれてしまった。流石に画面がアレなので、若い人にはどうかと思ったが、ネット上の評価もかなり高い。SNSなどで口コミがあったらしい。良い作品は不滅だ、というのもうれしい。