月面へ降り立ったアポロ飛行士たちが最も「怖かった」のは、月の砂=レゴリスだという。レゴリスは隕石などが月に衝突したときにできた破片だが、空気がないため月の誕生時代から全く風化されていない。映像などでは無害な粉塵のように見えるが、顕微鏡レベルでは無数の尖った角を持ったガラス片のような形をしている。アスベスト粉末のようなもので、宇宙服をすり減らしたり、ジョイント部分から入り込んで装置を故障させる。静電気を帯びてあらゆるものにまとわりつく。もちろん吸い込めば人体に悪影響がある。
月面での居住に挑むアルテミス計画では、レゴリス対策が大きな課題となる。レゴリスは月のあらゆる場所を覆っていて、写真では黒い岩が露出しているように見える場所も、その表面はレゴリスに覆われている。ナノミリメーターという微小サイズのものもあり、高性能なフィルターを設置してもそれに頼り切ることはできないので、入り込ませない対策が重要になる。その一例がスーツポートだ。
宇宙飛行士たちの月面での屋外活動は、映画などで見る「エアロック」は使わない。宇宙服は居住設備の外側に据え付けてあり、背中の部分がハッチになっている。人間は屋内でこのハッチを開き、宇宙服に潜り込むように着込んで、ハッチを閉じて外出する。この仕組みが「スーツポート」だ。外壁に宇宙服が何着もついた建物というのは面白い眺めだろうと、「スーツポート」で画像検索をかけてみたが、1枚も出てこなかった。まだ設計途中なのかも知れない。

