食材で遊べ / ジャガイモとベーコンのスパゲティ

最近時々作るメニュー。一流シェフのレシピではなく家庭の味をめざし、適当にイタリアっぽく作っていたものだが、なかなかいい感じだ。なので、これは本場では一般的なメニューかもしれないと思いAIに名前を聞いてみた。すると、
あなたのレシピをイタリア人が見たら、かなりの確率でこう言うと思います。
「それ、うちの祖母も似たの作ってた、でも名前は知らない」

とのこと。そういうのがいいんだよ、ということでセッションをPDFにまとめてみた。

日本人も、米に関してはお茶漬けや納豆ご飯のような、レシピの必要もないようなものをよく食べている。食べたからといって自慢もできないが、語り始めたら誰もが自分なりの工夫やルールがある。米食の文化は、技巧を凝らした料亭の一品ではなくそういうところにあるのだと思う。
米の価格が高騰し、家庭では米からスパゲティなどへのシフトが起こっているようだが、いつまでも「代用食」扱いでは満足感がないし、イタリア人にも失礼だ。このセッションの中には、ごく普通のイタリアの食文化の一端がよく現れていると思う。

※食材で遊べ
食べ物で遊ぶのはいけないが、食材で遊ぶのは料理だ。

新冷やしメニューの探索

暑い。世界各地で、史上最高の暑さが観測されているらしい。というような話は、去年も、その前も聞いたような気がする。人類は、本物の破滅に向かっているのかもしれないが、なんとかなっているのがむしろ不思議だ。終末というのは派手な戦争などではなく、ゆっくりした滅びなのだという人もいるから、今がそうなのかもしれない。
ということで、世界が破滅してもメシだけは食わないとやってられないし、歴史的な暑さにソーメンだけで生き延びられるとは思えない。そこで、この暑さでも栄養をつけられる料理を探して、一般的な料理に「冷やし」とつけて検索してみた。レシピ投稿サイトには無茶苦茶なものもあるので採用しないことにして、食品メーカーや料理研究家のサイトにあったものだけ紹介する。
あっても不思議ではないものがなかったりするが、こうしたサイトを歴訪していると、なんとなく食欲がわいてくるのがいい。

<鍋物>
冷やしすき焼き
https://www.kurashiru.com/recipe_cards/e2e36563-28dc-4902-a0d0-84c6869af8ab
冷やし寄せ鍋
https://www.ebarafoods.com/recipe/detail/recipe3721.php
冷やしおでん
https://www.ninben.co.jp/recipe/4294/
冷やし水炊き
なし

<丼もの>
冷やしカツ丼
https://recipe.rakuten.co.jp/recipe/1310001833/
冷やし親子丼
https://foodservice.ajinomoto.co.jp/recipepro/recipe/28294/
冷やしうな丼
なし(冷やしうな茶づけはある)
冷やし天丼
https://news.nissyoku.co.jp/restaurant/hamada20170802050644704
冷やし牛丼
なし
冷やし豚丼
https://recipe.rakuten.co.jp/recipe/1170002646/

<油っこいもの>
冷やしアヒージョ
https://oceans-nadia.com/user/384216/recipe/439996
冷やし油そば
https://www.kikkoman.co.jp/homecook/search/recipe/00052305/
冷やし餃子
https://www.kurashiru.com/recipes/4f233ad9-7700-462c-95e6-46c44a78237f
冷やし揚出し豆腐
https://www.marusima.co.jp/post_recipe/1362

冷やし麻婆豆腐
https://www.kurashiru.com/recipe_cards/99608340-8214-4945-ac9e-2341daf4c536

<お菓子>
冷やしせんべい
なし

冷やしドーナツ
なし

冷やしやきいも
https://www.kurashiru.com/recipes/d0e04e3b-2ed3-4f18-8918-6746c8f68755

<上げ足取り>
冷やし氷水、冷やしソフトクリーム
いずれもなし

サバ缶ヴィンテージ

昔からサバの水煮缶が好きだった.特に食べるとすぐ崩れてしまう中骨と,身と違ってしっかり脂肪の残っている薄腹の部分の味わいは,他の調理法では得られない缶詰ならではのものだ.ところが大人になってから食べても,どうも醍醐味に欠けるような気がしていた.食生活が豊かになったせいだと思っていたのだが.

10年以上前,食品流通の会社を取材した際,サバ缶が旨くなるのは賞味期限が切れてからで,販売できなくなったものを,社員が奪い合いをするという話を聞いた.なるほど,自分の味覚が変わったのではなく,早く食べ過ぎていたのか.これは試さなくてはと思ったが,なんだかんだで実際に買い込んだのは2011年.これは足掛け6年に及ぶ,真のサバ缶の追求の物語である.

サバ缶は本当に消費期限が切れてからが旨いのか.確か子供時代のサバ缶は,1つ2つわざわざ買ってきたりせず,押し入れか何かからホコリを被ったようなのを出してきてた覚えがある.親の世代特有の食品買いだめをやっていたのだろう.冬に買い物が不便になる北海道で生まれ育ち,また戦後の食糧のない時代を経験してきた人たちは,決まって保存食を貯めこんでいたものだ.子供時代のサバ缶もそんな買いだめのひとつだろうから,普通に賞味期限切れもあったのだろう.

少しでも賞味期限の迫ったのを求めて,サバ缶はスーパーでもワゴンセールなどの見切り品を狙ったのだが,それでも期限は数年後になる.その時は面白がっていても,何年か後には絶対バカバカしくなってるだろう。そう思うと,しばらく手を出せないでいた.が,ある日,自分ももう若くないのだということに思い至った.たとえ無為徒食のような人生でも,年月の積み重ねには何かの意味があったと身を持って示したい.そこでついに数個のサバ缶を買い,他の恥ずかしい思い出の数々とともに,押し入れにしまいこんだ.そのとき、賞味期限の2015年某日まで4年.ちなみに,購入直後も食べてみた.サバ缶自体久しぶりだったが,やはり醍醐味に欠けた.期待していない鮮度だけが印象に残る味だった.

サバ缶のヴィンテージは製造日ではなく,賞味期限で語られるべきだと思う.2015年の賞味期限を1日だけ過ぎたある日,満を持して開封したそれは,まだ若々しさの残るヌーボーというべき味だった.悪くはないが,4年も待った甲斐があったと言えるほどではない.もしかしたら今のサバ缶は製造法などが変わり,ここが頂点なのか?望んだものは決してその通りには手に入らず,いつもかすかな失望を伴う.その時のサバ缶は,確かに人生の味がした.

で、先日,そんなことも忘れてしまっていた頃に,賞味期限をしっかり1年以上過ぎたサバ缶を見つけて開けた.ちゃんとホコリを被り,心なしか色あせたように見える缶.できればプルトップではなく缶切りで開けたかったが.

ただし,開けた時の景色は,期限切れ直後の去年とはだいぶ違っていた.若い缶は隙間なく身が詰まっているが,今回のは身が溶けて細くなったのか,煮汁の隙間で泳いてるようだ.また,若い缶のようなピンクっぽい鮮やかな身の色や,骨の硬さはどこにもない.煮汁の透明感はなくなり,ところどころに白いモヤのような凝固物がただよう.味は全体に塩味がよくまわっていて,コクが増している.アミノ酸も増えているようだ.

それは昔と同じだった.ただそれだけのことが実にうれしい.

鯖水煮缶

次回「リズムとズレ2」(6/20投稿予定)
乞うご期待!