AI動画は進化の真っ最中

YOUTUBE動画にショートフィルムというジャンルがある。最近登場した「ショート」ではなく、昔から個人や少人数のクリエイターが、5分から15分程度の短編映画で技術やセンスを競ってきた場だ。CGが一般化してからは、個人でも高度な作品を投稿するようになった。映像の最先端はハリウッドではなく、こういうところにあるのではないかとかねがね思っている。

そのショートフィルムにも、生成AIによる作品が増えてきた。始めて見ると、細部の作り込みの精密さに驚く。映画ならセットやCGでこれだけのものを作るのは大変だが、こういうものが増えてきたのは、まさにAIの恩恵だろう。

ただしよく見ると、これまでの動画になかった奇妙なエラーもある。衝突コースの対向車が突然消えたり、手の中に突然ものが現れたりする。手を使ったりものをもたせるのは苦手らしく、ジュースを鼻から飲む動画もけっこうある。大勢の人がなぜか全員同じ方向に歩いているものも。同じような動作やアングルのものも多い。ストーリーがないので、何作かで飽きてくる。

そして決まって美女が登場する。そこでも脚の数が増えたり、髪の毛がプルプル動いたりというようなAIならではのエラーが起こる。ただしCGだけの時代には「不気味の谷」といって、仕上がりが人間に近づくほどささいな違いが不気味に感じられてしまう現象があったが、AI作品ではどれも人間に見える。

そういうAI作品ならではのエラーも、解決して見せるクリエイターが次々と登場しているようで、公開日がほんの数日違ったただけで、よりリアリティの増した作品が登場する。例えばまともにジュースを飲むシーンが増え、ジュース問題をクリアしてみせたぞという意気込みが見える。ここがAI技術や使いこなしスキルの最先端なのだとわかる。


建物や乗り物を見てると、今さらながらにシド・ミードやルイジ・コラーニの影響の大きさを感じる

ウィキ・ラブ・フォークロア / LLM時代の生き残り戦略か

近年、ウィキペディアをはじめとする優良な情報源が、軒並みに寄付を呼びかけ始めた。サーバーコストその他の高騰は、大量の情報を無償提供してきた経営規模の小さな事業を直撃している。かつて検索エンジンは検索結果の一番上にウィキペディアをリストしていたが、今は真っ先にAIの回答が表示される。このせいでWIKIまで見に行かなくなった人も増えただろう。
AIに必須のLLM(大規模な文字のデータベース)の学習に、ウィキペディアの情報が大量に利用されたらしい。技術的には理解できないが、LLMは単純に文言を保存しているわけではないらしいので、権利面では単純なパクりとも言えないようだ。また短時間に情報収集したために、権利との関係が整理されなかったのかもしれない。それでウィキペディアは、庇を貸して母屋を盗られるようなことになったらしい。

そのウィキペディアでは、去年から「ウィキ・ラブ・フォークロア」を開催している。これは世界各地の地域に残る伝統行事や芸能、生活用具などの画像を募るもので、優秀者の表彰もあるという。観光案内に載るような有名なものだけでなく、地域の知られざる伝統行事なども含むらしい。個人ブログなどではこういう無名の行事の紹介はあるだろうが、AIの回答用としては信頼性が低い。掘り下げたレベルの地域情報を収集し、権威付けるウィキ・ラブ・フォークロアは、AIに対するイニシアティブを取り戻す戦略だと思う。知の殿堂らしいスマートな試みだ。

圧倒的な投資によって既存のネット世界を飲み込もうとするAIに対し、ユーザーの参加によって新たな知の原野を切り開こうとするウィキペディア。その生き残り戦略は、我々自身にとっても知の自主性を取り戻す試みとなるかもしれない。

タイトル画像の話 / 今夜

やはりタイトル画像が気に入らないので取り替えることに。背景はAI製。「ウエストサイド・ストーリーに出てくるような、非常階段のある古いレンガ造りのビル」という注文で、なかなかの仕上がりだ。よく見ると1階から非常階段が繋がっているのが不用心だが、雰囲気はよく出ている。
だが、もう少し正面からの画像になるよう注文をしたら、権利関係云々の警告が出て拒否されてしまった。一時期、AI製のディズニーキャラクターなどが問題になったので、修正を重ねて問題のある画像に近づけるような行為は、規制されるのかも知れない。今回は、最初に具体的な映画の題名を出したのが悪かったような気がする。指示してないのに夜の画像になったのも、映画の階段のシーンが夜だったからだろう。ただ、あれは路上ではなかったのだが。

そこで試しに、有名な「今夜」の英語の歌詞を、主人公たちの2カ国語に翻訳するよう注文したが、これはすんなり通った。どのへんが境目なのか、よくわからない。

さて、トニーとマリア、ポーランド語とスペイン語(プエルトリコ)、移民、分断と対立。残念なことに、半世紀以上も前の映画のテーマは、現代にもそのままあてはまってしまう。映画は誰も救われない結末だったが、現実の世界はハッピーエンドになるだろうか?